IT農業(スマート農業)とは?導入の課題や取り組み事例6選を紹介

2024.01.03
IT農業(スマート農業)とは?

「IT農業(スマート農業)ってどんな課題や事例があるか知りたい」
「IT農業(スマート農業)に実際に取り組む企業について知りたい」

と思うことはありませんか?

IT農業ってよく聞くけど、実際の現状について理解するのは難しいですよね。

では、IT農業の現状はどうなっているのでしょうか?

そこで今回は、

  • IT農業の目的
  • IT農業の今後の課題
  • IT農業の取り組み事例

について詳しく解説します。

この記事を読めば、IT農業についての理解が深まります

ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

IT農業(スマート農業)とは

IT農業とは

IT農業とは、IT技術であるロボットやAIなどの先端技術を活用する農業です。

具体的には、以下のような技術があります。

  • ハンドル操作や作業機制御を自動化したロボットトラクター
  • 農薬や肥料を散布できる農業用ドローン
  • スマホを利用した水田の水管理作業

これまで農業の分野では、ほかの分野と比較して先進技術を利用した取り組みが遅れていました。

農業の分野においてもIT技術を駆使することで、農業の課題であえる人手の確保や高齢化の解決に期待が寄せられています。

IT農業と同じ意味として用いられる用語としては、

  • スマート農業
  • スマートアグリ
  • アグリテック

などがあげられます。

現在の農業が抱える大きな2つの課題

農業を職業とする人

IT農業では、農業の課題の解決が期待されています

現在の農業が抱える大きな課題は、以下の2つです。

  1. 人手不足
  2. 高齢化

それぞれの課題をみていきましょう。

1.人手不足

農林水産省の統計によると、農業における人口推移は、2010年の約260万人から2019年の約168万人と大幅に減少しています。

農業の人手不足の要因としては、以下の2つがあげられます。

  • 新規参入のハードルの高さ
  • 収入の低さ

新規参入のハードルが高い要因としては、農地確保が困難な点や農業用の機械導入が高額などの点です。

また、農業は始めてすぐに収入になるわけではなく、作物を収穫して販路を確立してから、はじめて収入を得ます。

さらに、得られる収入がほかの産業と比べて低いとされているので、働き手が慢性的に足りていない現状です。

2.高齢化

農業の高齢化問題は深刻で、農林水産省の統計によると、約168万人の就業者のうち約6割が65歳以上というデータになっています。

高齢化の原因は、新しい担い手が不足していることです。

農業はほかの産業と比較して賃金が低く、若者はこの業界に入ることも残ることも難しくなっています。

その結果、高齢化社会はますます進み、現在働いている人の負担が増えます。

高齢化や業界への新規参入者不足の問題を解決するためには、さまざまな施策が必要です。

若い人が働きやすい産業にすることはもちろん、外国人労働者の就労やIT技術を活用し、業界の生産性・競争力を高めることが重要です。

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IT農業(スマート農業)の5つの目的

IT農業を推進する男性

IT技術を活用することで、農業にも大きなメリットがあります

IT農業の具体的な目的は、以下の5つです。

  1. 農作業の労力軽減・効率化
  2. 農作物の品質向上
  3. 農業技術の継承
  4. 食料自給率の向上
  5. 環境への悪影響を防ぐ

それぞれの目的について詳しくみていきましょう。

1.農作業の労力軽減・効率化

IT農業の目的のひとつは、農作業の労力軽減・効率化です。

例えば、自動運転の農機や収穫ロボットを活用することで、作物の管理や収穫などの重労働の負担軽減が可能です。

また、ドローンやセンサーを活用して農場のモニタリングを実施すれば、農場への見回り回数を減らせます。

農作業の労力軽減・効率化を実現することで、人手不足の課題の解決が期待できます。

2.農作物の品質向上

IT農業の目的のひとつは、農作物の品質向上です。

IT農業の技術を活用することで、さまざまな方法で農作物の品質を向上させることが可能。

例えば、農作物の最適な環境のためにこれまでの栽培履歴をデータ化し、そのデータを活かすことで、より生産性や品質が向上します。

ほかにも、自動運転の農機や収穫ロボットを活用することで、雑草を精密に駆除したり、農作物を保護したり、作物の傷んだ部分を検出して取り除いたりすることが可能です。

3.農業技術の継承

IT農業の目的のひとつとして、農業の知識や技術を農家の世代間で継承できることがあげられます。

なぜなら、栽培技術などをデータ化して分析することで、農業の知識や技術を伝え、ベテラン農家以外の新規就農者でも再現可能な技術として継承されやすくなるからです。

また、農業技術がスムーズに継承されることで、収益サイクルを早めることも可能になり、新規就農者の収入を上げていくこともできます。

農業でも稼げると思える人が増えることで、農業の慢性的な人手不足や高齢化の解決も期待されます。

4.食料自給率の向上

IT農業の目的のひとつは、食料自給率の向上です。

農林水産省は、2030年でカロリーベースでの総合食料自給率を45%、生産額ベース総合食料自給率を75%に高める目標を掲げています。

現在カロリーベースでは37%、生産額ベースでは66%です。

それぞれの数値を上げていくためには、IT農業技術の活用によって農作物の生産性を上げていくことが必須になっています。

5.環境への悪影響を防ぐ

IT農業は、環境への悪影響を防ぐことも目的のひとつです。

近年、化学肥料や農薬の使用が環境へ悪影響を及ぼしていることが懸念されています

そのため、データ分析の活用によって農薬や化学肥料の必要な箇所を割り出し、高度なセンサーやドローンによって必要な箇所にのみ農薬を散布するなどが期待されます。

これらが実現できることで、農作物の生産量を維持しながら環境に配慮した農業が実現可能です。

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IT農業(スマート農業)の取り組み事例6選

IT農業に取り組む女性

どのようにIT農業が活用されているのでしょうか

ここでは、IT農業の取り組み事例を説明していきます。

  1. ロボット技術
  2. ビッグデータ
  3. AI(人工知能)
  4. IoT
  5. 農業用ドローン
  6. 温室栽培

それぞれみていきましょう。

1.ロボット技術

取り組み事例の1つ目が「ロボット技術」を活用した事例です。

農業にロボット技術を活用すれば、これまで手作業で行っていた作業や、時間がかかっていた重労働を自動化できます

具体的には、以下の作業の自動化が可能です。

  • 作物の収穫
  • 作物の選果・箱詰め
  • 荷物の運搬
  • 田畑の耕うん・播種

これらの作業は、高齢化が顕著な農業界において、技術のあるベテランが時間をかけておこなっていました。

ロボットを活用すれば、初心者でもベテランと同じレベルで効率的に作業できます。

また、現在は北海道大学と農業機械メーカー・ヤンマーの農業用ロボットの共同開発や、ヤマハ発動機の農薬散布用無人ボートの開発が進んでいます。

このことで将来的には、一般的な農家の方でもロボットを導入でき、作業負荷の軽減と生産性の向上を実感できるでしょう。

2.ビッグデータ

取り組み事例の2つ目が「ビッグデータ」を活用した事例です。

ビッグデータを活用すれば、効率的な栽培とリスク回避が見込めます

具体的には、以下の活用法があります。

  • 気温・湿度・日射量の測定・分析による病気リスクの回避
  • 炭酸ガス(CO2)の測定・分析による収穫・出荷時期の予測
  • 過去の生育データの分析による出荷ロスの低減

例えば、農作物のなかには、高温多湿な環境で育つと病気を発症するものがあります。

そのような農作物を育てる際に、ビニールハウス内の温度や湿度を記録しデータに残しておくことで、病気リスク回避につながります。

また、野菜の収穫時期は、炭酸ガス(CO2)の量によって大まかに予測できるため、効率的な収穫が可能です。

これらの事例は、すでに長野県や山梨県など、日本全国の農園で取り入れられています。

これまでの経験だけでなく、ビッグデータも活用することで、より確度の高く効率の良い農業が実現できます

3.AI(人工知能)

取り組み事例の3つ目が「AI(人工知能)」を活用した事例です。

AI(人工知能)を活用すれば、農業経験や知識がない方でも農業に従事できます

具体的な活用法は、以下のとおりです。

  • 画像解析による作物の自動選果
  • 画像解析による病害虫の早期発見・診断
  • 田畑の土壌解析を元にした潅水・施肥

すでにGoogleのオープンソースAIを活用し、上記を部分的に実施している事例もあります。

AIで作物の自動選果ができれば、これまで人が行っていた作業をAIに置き換えられるため、人件費削減と精度向上につながります。

また、AIで土壌を解析すれば、必要な水分量・農薬量も把握できるため、過不足のない適切な生育とコスト削減が可能です。

若手の新規就農者が不足している農業界を支える技術といえるでしょう。

4.IoT

取り組み事例の4つ目が「IoT」を活用した事例です。

IoTを活用できれば、これまでよりも田畑の状況把握を容易に行えます。

具体的な活用法は、以下のとおりです。

  • 小型カメラを用いて田畑のリアルタイム情報の収集
  • スマートフォン上での生育状況の確認
  • 土壌の状態を分析するIoTトラクター

実際に山梨県のある農家では、小型カメラとネットワークシステムを導入し、農園の気温・温度・雨量などのデータを定期的に収集する仕組みを整えています。

収集したデータは、スマートフォンで閲覧できるため、これまで農園の状況把握に使っていた時間の削減に成功しました。

また、作物の最適な収穫時期の判断も可能になったため、作物の品質向上も実現しています。

長時間労働や専門知識が必要といったイメージが強い農業界において、新規就農者の定着の追い風になる技術といえるでしょう。

5.農業用ドローン

取り組み事例の5つ目が「農業用ドローン」を活用した事例です。

農業用ドローンを活用すれば、作業時間の軽減を期待できます。

具体的な活用法は、以下のとおりです。

  • 種子・農薬の散布
  • 生育情報の収集
  • 作物の運搬

農業用ドローンには、GセンサーやGPS、カメラが搭載されているため、田畑の状況を認識してピンポイントで種子や農薬の投下が可能です。

また、作物の運搬に時間を割いていた方もドローンに任せることで、そのほかの作業に時間と体力を使えます。

操縦性・安定性にも優れていることから、すでに農業用ドローンを導入し、米の生育に役立てている事例も多数あります。

ドローンの操縦技術を身につける必要がありますが、最短5日で免許を取得できるスクールもあるため、検討してみてください。

6.温室栽培

取り組み事例の6つ目が「温室栽培」を活用した事例です。

温室栽培とは、光・温度・湿度といった生育条件を自由に調整できる施設でおこなう栽培法です。

温室栽培には、AIとIoTの技術が使われており、以下の部分に活用されています。

  • センサーによるハウス内の温度・湿度などの情報収集
  • AIによる収集した情報の分析
  • 分析結果を元にした水分量・日射量の自動調整

また、栽培を進めていけばさらにデータが増え、AIの学習精度が向上します。

その結果、作物にとってより良い生育環境の実現が期待できます。

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IT農業(スマート農業)における今後の3つの課題

IT農業の課題を話す男性

IT農業はメリットが多く注目されていますが、今後のIT農業の推進に向けて課題も多くあります

とくに大きな課題とされているのが、下記の3つです。

  1. 導入費用
  2. 人材育成
  3. 管理工数

それぞれの課題を詳しくみていきましょう。

1.導入費用

IT農業の実現に向けた最大の課題は、技術導入にかかる導入費用です。

IT農業で使われるシステムの多くは高価であり、資本力のない小規模農家や生産者にとっては法外なコストとなる可能性があります。

とはいえ、中長期的な視点で考え、収益改善や労働力不足の解消につながるのであれば導入を検討していきましょう。

農林水産省では、IT導入に活用できる助成金も準備しているので、活用できる助成金があるか探してみるのがおすすめです。

2.人材育成

IT農業のもうひとつの大きな課題は、IT技術の管理・維持に必要なスキルを持った人材の不足です。

IT農業を実現するためには、現場作業とコンピュータシステムの両方を経験し、技術を使いこなす人材を育成する必要があります。

IT農業の人材育成については、IT機器のメーカーだけでなく、大学の研究機関なども力を入れており、今後IT技術の普及が期待されています。

3.管理工数

IT農業の活用は、工数の管理という点でも課題があります。

IT技術を活用することで、農作物の管理時間を大幅に短縮できますが、技術の設定やメンテナンスにかかる時間も考慮する必要があります

IT農業による農場管理は効率的で費用対効果に優れていますが、システムのセットアップやメンテナンスにかかる時間も費用対効果の分析に含めなければいけません。

IT農業(スマート農業)の企業の参入

IT農業に参入する

IT農業への企業の参入も進んできています。

IT農業への企業の参入により、スマートな農業を実現するための新技術を開発・展開するスタートアップ企業が数多く誕生

これらの企業は、農家の生産・運営を支援する様々なプラットフォームを開発しています。

また、人工知能で雑草だけを、ピンポイントで除草するロボット収穫機を開発したブルーリバーテクノロジーや、作物を監視する土壌センサーを開発したCropXといった企業もあります。

さらに、マイクロソフトやIBMといった大企業も、IT農業の発展に向けた投資を始めています。

マイクロソフトは、農家がデータを分析し、主体的な意思決定を行うための分析プラットフォーム「Azure FarmBeats」を開発しました。

IBMも、よりスマートな農業を実現するための技術開発に投資しています。

IT農業(スマート農業)で活用できる助成金

IT農業で活用できるお金

IT農業を推進するために、農林水産省は農業支援の助成金を準備しています。

助成金の幅は広く、すでに農業をしている人向けだけでなく、これから農業を始める人向けや農業法人経営者向けにも準備しています。

具体的には、下記のような助成金です。

  • 経営体育支援事業
  • 農業経営基盤強化資金
  • 農業近代化資金

IT農業の実現のためには導入コストがかかってしまいます。

なので、機材投資を検討する場合には上記のような助成金を確認しておくのがおすすめです。

まとめ:IT農業の導入に向けて現状を整理し、課題を明確にしよう

本記事では、IT農業について知りたい方に向けて、IT農業の事例や課題について解説しました。

  • IT農業は農業の効率や生産性の向上が期待できる
  • IT農業は農業が抱える人手不足や高齢化の改善が期待できる
  • IT農業の実現には導入コストや人材育成が課題である

IT農業は、日本の農業が抱える問題を解決できると期待されています。

しかし、導入に当たってはコストや人材育成が大きな課題となっています。

これからIT農業を実現していきたい方は、農林水産省の助成金なども活用しつつ、中長期的な視点で推進していくのが重要です。

まずはIT農業について理解し、どこから着手していくかの現状を整理することからはじめていきましょう。

また、農業に新規参入を検討されている方は、既存の農家の方とコミュニケーションを取りながらIT農業に取り組むのもひとつの方法です。

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