DXとIT化はどう違う?DXの定義やメリット・成功事例を解説

公開日: 2022.12.31
更新日: 2024.01.03
DXとIT化はどう違う?

「DXの定義がよくわからない」
「DXのメリットやデメリットを知りたい」

と思うことはありませんか?

近年「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を聞く機会が増えてきましたが、実態はなかなか把握しづらいですよね。

DXの定義やメリット・デメリット、成功事例はどのようなものがあるのでしょうか?

そこで今回は、

  • DXの定義や注目されている理由
  • DXのメリット・デメリットを解説
  • DXの成功事例を紹介

について詳しく解説します。

この記事を読めば、DXに関することが一通りわかります。

ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DXとは

DXという言葉を耳にする機会は増えましたが、実際にどのようなものであるかはイメージしづらいです。

そこでまずは、DXの定義と注目されている理由について解説します。

  1. DXの定義
  2. DXが注目されている理由

具体的な成功事例などを見る前に、DXの全体像を把握しておきましょう。

1.DXの定義

DXは「Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション」の略で、直訳すると「デジタル変革」という意味になります。

企業の業務や業務プロセス全体をデジタル化して、製品、サービス、ビジネスモデルなどの変革を進め、新しい価値を顧客に提供して、企業の競争力優位性を確立することがDXの定義です。

単なる変革にとどまらず、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすという、広義な意味を持っています。

2.DXが注目されている理由

DXは、社会にとって革新的な価値を生み出すことが期待され、その注目度は高まっています。

企業活動のあり方を大きく変えるものと期待されています

また、日本では少子高齢化に伴う人材不足の解消が求められており、今後ますます深刻化することが予想されます。

そのため、DXは新たな経済価値の創造につながるものとして注目されています。

dx 略DXは何の略?DXが注目される理由や抱える課題についても解説

DXとIT化・デジタル化の違い

DXとITの違い

DXと意味が混同されることが多い用語が「IT化」と「デジタル化」です。

まずはこの2つの言葉の意味と、DXとの違いについて解説します。

  1. 「IT化」とは?
  2. 「デジタル化」とは?
  3. 「IT化」と「デジタル化」だけではDXを実現できない

それでは詳しく見ていきましょう。

1.「IT化」とは?

IT化は「情報活用技術を用いて業務やサービスのあり方を変えること」を指します。

アナログな仕事をIT化することで、労働時間の短縮や残業の廃止など、パフォーマンスの向上が可能になります。

DXが社会や組織・ビジネスの仕組みそのものを変革することなのに対し、IT化は既存の業務プロセスのまま業務効率化と生産性向上を図るという非常に限定的な言葉です。

IT化の先にDXがあると識別するとわかりやすいかもしれません。

2.「デジタル化」とは?

デジタル化は「アナログのデータをデジタルに変換すること」を指します。

コンピューターがなかった時代には、電話やファックス、紙によるコミュニケーションが中心でした。

現在では電子メールやチャット、ビデオ会議などが加わり、情報交換の可能性がデジタル化によって広がっています。

DXの推進には、デジタル化が欠かせません。

3.「IT化」「デジタル化」だけでは、DXを実現できない

DXの実現には「IT化」と「デジタル化」両方の推進が必要です。

しかし、業務効率化のためにシステムを導入したり、ペーパーレスや電子化など環境を整備することは、単にIT化やデジタル化を進めただけに過ぎません。

そのうえで「効果的なデータ収集により、ターゲット市場セグメントや人気商品の予測が容易になった」といった結果まで視野を広げていくことでDXの成功に近づけます。

IT化・デジタル化の推進は、DXを実現するための一手法に過ぎないことを忘れてはいけません。

DXの4つのメリット

DXのメリット

DXを推進することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?

そんな疑問に答えるために、ここではDXのメリットを4つご紹介します。

  1. 働き方改革・生産性向上
  2. BCP(事業継続計画)対策の充実
  3. レガシーシステムからの脱却
  4. 新たなビジネスモデルの確立

DXの具体的なメリットについて解説してきます。

1.働き方改革・生産性向上

DX推進により社内業務をデジタル化することで、働き方改革を促進し、生産性を向上させられます

自動化されたソフトウェアにより、個人によるミスをなくし、従業員は本来の業務に集中できるようになります。

近年、「AI(人工知能)」や「RPA((ロボティツク・プロセス・オートメーション)」などの最先端技術を活用した、業務プロセスの自動化に対する関心が高まっています。

これらの技術は、労働時間の短縮や従業員の効率化など、企業の目標を実現するために役立っています。

2.BCP(事業継続計画)対策の充実

DXの推進により働き方が変わるだけでなく、BCP対策にも繋がります。

BCP(事業継続計画)対策とは、災害やシステム停止などの不測の事態が発生した場合に、障害を軽減し、日常機能を持続させるためのものです。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、リモートワークを取り入れた企業も多いですが、BCPの初期段階として業務効率が必要となります。

DXを完成させることで、異常事態や緊急事態に柔軟に対応できるようになるのです。

3.レガシーシステムからの脱却

日本企業の多くが抱えている問題として、社内システムの複雑化やブラックボックス化が挙げられます。

使いづらく放置された古いシステムのことをレガシーシステムと言い、そのままにしてしまうと生産性の向上が見えないにもかかわらず維持費はかかってしまいます

何年も活用している基盤システムが老朽化したり、現在の社会の流れに対応していなかったりすることで、レガシーシステムと化してしまうところを、DX推進で脱却できます。

4.新たなビジネスモデルの確立

DXの導入は、デジタル化にとどまらず、新しいサービスやビジネスの構築・開発にもつながります。

デジタル技術を活用した最新のビジネスモデルを分析することで、DXが進み、今後の急激な社会の変化についていくこともできるようになります。

DXを追求することで、新たなビジネスモデルを確立できる可能性があります。

DXの3つのデメリット

DXのデメリット

メリットが強調されがちなDXですが、一方でデメリットもあります。

以下では、DXのデメリットを3つご紹介します。

  1. 初期費用やランニングコストがかかる
  2. 既存システムからの移行に手間がかかる
  3. すぐには結果が出ない場合もある

デメリットとメリットの両方を理解し、DXを推進するかどうか検討するといいでしょう。

1.初期費用やランニングコストがかかる

DXの推進のデメリットの一つは、初期投資やランニングコストが発生する点です。

新しいインフラの構築や既存システムの最構築には、エンジニアの人件費も必要になります。

DXの推進は長期的には大きな利益を生む可能性がありますが、結果が出るまで時間がかかることを念頭に置いておく必要があります。

そのため、導入にかかる費用とコスト削減効果を比較検討し、自社に最適な形を検討すると良いでしょう。

2.既存システムからの移行に手間がかかる

DX推進は、場合によっては既存システムに大幅な変更を加える必要が出てきます。

例えば、大規模なプラットフォームの移行など、切り替えが複雑になると、DX推進の弊害となる可能性があります。

システムの移行には膨大なエネルギーと労力が必要なばかりか、専門知識のあるIT人材でなければ、対応できないといったケースもあることを認識しておく必要があります。

DXを検討する際には「このDX推進がなぜ必要か」を社内全体で共有する必要があるでしょう。

3.すぐに結果が出ない場合もある

DXの推進は、確立された手法があるわけではなく、用いられるツールもさまざまです。

結果が出るまで、平均3〜5年ほどといわれているため、試行錯誤しなければいけない場合も少なくありません。

そのため、長期的に推進できる予算やリソースの確保も必要となります。

DX推進を成功させるためには、計画性と長期的な投資が不可欠です。

DXの成功事例

DXの事例

DXの成功事例には、どのようなものがあるのでしょうか?

DXの成功事例を知ることで、より具体的なイメージが湧くことでしょう。

  1. 家庭教師のトライ
  2. 大塚製薬
  3. 富士通

以下では、DXで成功した企業の例を3つご紹介します。

1.家庭教師のトライ

家庭教師派遣事業を展開するトライグループは、中高生向け映像授業サービス「Try IT」の提供を開始しました。

4,000本の授業動画をスマートフォンで視聴でき、自分の好きなタイミングで学習することを可能にしました。

ユーザー視点に立った設計が評価され、登録者数は100万人を超え、広く活用されるようになりました。

従来の家庭教師派遣モデルから、教育コンテンツをIT技術で提供しするビジネス戦略に転換し、成功した事例です。

2.大塚製薬

大塚製薬は「ポカリスエット」や「カロリーメイト」などの健康食品で有名ですが、医療品事業も大きな柱となっています。

薬の飲み忘れに着目し、時間になるとLEDの光で服用を促す服薬支援薬箱「プレタール アシストシステム」をNECと共同開発しました。

錠剤を取り出すとランプが消え、服用した錠剤の履歴が記録され医療関係者に提供されます。

服用を促すだけでなく、服用と連動したデータを収集・分析することで、新たなビジネスモデルの可能性を広げています。

3.富士通

富士通株式会社は、時間や場所にとらわれない新しい働き方のコンセプト「Work Life Shift」を発表しました。

その実現に貢献したのが、ITソリューション「FUJITSU Work Life Shift」です。

ワークフローシステム、コミュニケーションプログラム、勤怠管理システムなど、オフィスと変わらない快適なリモートワーク空間を構築するためのさまざまな機能を提供しています。

DX-事例DXの事例を業界別に6つ紹介!失敗した事例も踏まえて推進のポイントを解説

DXと混同されやすいビジネス・IT用語

IT技術を使う人

DXと意味を混同して使用されることが多いビジネス・IT用語について解説します。

  1. IoT
  2. ICT

2つの用語の定義と、DXとの関係性について見ていきましょう

1.IoT(インターネット・オブ・シングス)

IoTとは、「モノがインターネットにつながること、またはその技術」を指します。

パソコンや携帯電話などのコンピュータ機器だけでなく、建物や機械、産業機器なども含まれます。

DXは、IoTをはじめとする先進的な技術を活用することで、業務プロセスの変革や、新しいビジネスモデルの構築も可能になります。

また、IoTの活用は、ビジネスの生産性や生活の利便性を高めるものであり、DXの目的にも合致しています。

2.ICT(インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジー)

ICTをわかりやすく説明すると、ITにコミュニケーションを加えた「情報伝達技術」を指します。

例えば、パソコンやタブレット端末を使った学習システムや、一人暮らしの高齢者を遠隔で見守るシステムなどが挙げられます。

DXが組織構造やビジネスモデルの変革などを目的としているのに対して、ICTはコミュニケーションの活性化などを通して業務の効率化を目指すものです。

ICTは、通信インフラを構築するために不可欠な技術であり、DX実現の後押しする関係であるといえます。

iot jireiIoTの活用事例をカテゴリー別に紹介|IoTが可能にする4つの機能も解説

DX推進のポイント

DXを推進する

いざDXを実現する段階になって、トラブルに見舞われることも少なくありません。

DXを上手く推進するためには、事前にポイントを押さえておく必要があります。

  1. 経営者・トップ層の参画
  2. 中長期的な計画で進める
  3. デジタル人材の育成

以下では、DXを推進するためのポイントを3つご紹介します。

1.経営者・トップ層の参画

DXを推進するためには、経営層のコミットが欠かせません。

DXは、業務の一部分だけを変えるものではなく、企業文化、風土など企業全体を大きく変換していくものです。

一朝一夕では成功せず、組織全体として推進していく必要があります。

そのため、経営層が率先してDXへの旗振りを行うことで、現場の管理職やメンバーの背中を押すことになるはずです。

2.中長期的な計画で進める

DXを推進するためには、中長期的な視点で施策を実行して行く必要があります。

IT化・デジタル化に比べて、DXは大局的な質的変化を求められるためです。

長期的に推進できる予算やリソースの確保、専門知識のあるIT人材の採用も視野に入れる必要があります。

目指すべき方向性と実現に向けた戦略を明確にしておくことが、DX推進のポイントといえます。

3.デジタル人材の育成

DXを推進するためには、デジタルに精通した人材を獲得することが重要です。

組織のリーダーは、先端デジタル技術を持つ企業との提携も視野に入れつつ、素早く人材の確保に乗り出す必要があります。

デジタル人材の必要性は一過性のものではなく、DXが本格的に稼動した後も、システムの統括・管理にはデジタル人材が必要です。

人材の確保は年々ハードルが上がっているため、いち早く人材を確保できる環境を整備することが重要です。

まとめ:IT化はDX推進に不可欠

本記事では、DXの定義やメリット・デメリット、成功事例について解説してきました。

  • DXによって働き方改革・生産性向上につながる
  • DXは中長期的な計画で進める必要がある
  • DXは革新的なイノベーションをもたらす

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単にテクノロジーを指す言葉ではなく、ビジネスの機能、そしてその中で働く人々のあり方を変える概念のことです。

DXは、ITツールとの融合により、業務効率の向上や経済的利益の増大、さらには業界全体の新たな自由を生み出す可能性を秘めています。

しかし、DXの進化を支えるには、デジタルに精通した人材不足など、まだ多くの障害があります。

まずは自社で始められることから少しずつ進めていき、企業に変革を起こしていきましょう。

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