個人事業主が住所変更をする際に必要な手続きとは?5つのパターンで解説
個人事業主になると、あらゆる手続きに住所を記載することがありますね。
しかし、もし引っ越して住所が変わった場合はどのような手続きが必要か、ご存知でしょうか。
「今後引っ越す予定があるけど、まず何をしたらいいのかな?」
「個人事業主が住所変更したときに注意することは?」
そんな疑問をお持ちかもしれません。
そこで今回は、
- 個人事業主の住所変更のポイント
- 個人事業主が住所変更したとき税務関係以外での必要な手続き
- 個人事業主が住所変更する際の注意点
についてご紹介します。
個人事業主は場所にとらわれない働き方も可能ですから、住所が変わる機会は少なくありません。
住所が変わるときのために、必要な手続きを知ってスムーズに進められるようにしましょう。
「個人事業主が住所変更するときはどんなことが必要?」と疑問に思っている方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
個人事業主の住所変更でポイントになるのは「管轄の税務署が変わるかどうか」
まず、個人事業主の住所変更でポイントとなるのは、「管轄の税務署が変わるかどうか」です。
個人事業主は「開業届」の提出も「所得税」の納付も管轄の税務署におこないますね。
そのため、引っ越しのときは新しい住所が現在と同じ税務署の管轄になるのか、変わるのかを確認しましょう。
それぞれのケースで住所変更の必要な手続が変わります。
詳しく見ていきましょう。
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管轄の税務署が変わらない場合の変更まとめ
それほど遠方への引っ越しではない場合、管轄の税務署が変わらない可能性もあります。
管轄の税務署が変わらないときは、「個人事業の開業・廃業等届出書」のみ提出すればいいでしょう。
個人事業主であれば、開業のときに「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出した方もいますよね。
引っ越すと届け出ている内容が変わるので、再度提出が必要になるのです。
そこでこちらでは、管轄が変わらない場合の書類の提出方法や期限についてご説明します。
1.提出書類:個人事業の開業・廃業等届出書
「個人事業の開業・廃業等届出書」は、個人事業主として開業・廃業するときに提出する書類です。
個人事業主であれば、開業のときに提出したという方は多いでしょう。
一方で提出は必須ではないので、届け出ていない人もいるかもしれません。
届け出ている人は、引っ越しによって住所が変わるので、新しい内容を届け出るために再度提出をします。
届出ていないという人も、引っ越しを機に提出するといいでしょう。
「個人事業の開業・廃業等届出書」は税務署で直接入手するか、あるいは国税庁の公式ホームページからダウンロードできます。
2.添付書類:12桁の個人番号の記載と、本人確認書類の提示またはコピーの添付
「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するとき、添付書類として次の2つが必要です。
- 12桁の個人番号(マイナンバー)の記載
- 本人確認書類の提示またはコピー
12桁の個人番号(マイナンバー)は、「個人事業の開業・廃業等届出書」に記入する欄があるので直接書き込みます。
本人確認書類は、窓口の場合は提示、郵送の場合はコピーを添付しましょう。
3.提出先:納税地の税務署長宛て
提出先は管轄の納税地の税務署長宛てです。
税務署に直接足を運んで窓口へ提出する方法と、郵送で提出する方法があります。
管轄の納税地を確認して、間違いのないように提出しましょう。
4.提出期限:事務所移転等の事実があった日から起算して1ヵ月以内
「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出期限は事務所移転などの事実があった日から起算して1ヶ月以内と定められています。
提出期限が土曜・日曜・祝日等に当たる場合は、これらの翌日が期限です。
比較的余裕があるとはいえ、引っ越しで慌ただしくしているとすぐに迫ってくるでしょう。
余裕を持った提出を心がけるといいですね。
詳しくは、国税庁の公式ホームページを参考にしてください。
管轄の税務署が変わる場合の変更まとめ
遠方への引っ越しの場合、管轄の税務署が変わる可能性が高いです。
管轄の税務署が変わるときは、「個人事業の開業・廃業等届出書」に加えて「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」の提出が必要になります。
「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出については、先ほどご紹介した内容と同じです。
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」の提出についてご説明します。
1.提出書類:所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
管轄の税務署が変わるときは、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出します。
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」は引っ越しなどで住所が変わり、納税地が異動となる場合に提出する書類です。
これまで納税していた税務署から、新しい住所を管轄する税務署に異動することを届け出るものなので、忘れずに提出しましょう。
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」は税務署で直接入手するか、あるいは国税庁の公式ホームページからダウンロードできます。
2.添付書類:12桁の個人番号の記載と、本人確認書類の提示またはコピーの添付
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を届け出るときに必要な添付書類は次の通りです。
- 12桁の個人番号(マイナンバー)の記載
- 本人確認書類の提示またはコピー
「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するときに必要な添付書類と同じなので、同時に手続きするといいでしょう。
郵送で提出する場合は、個人番号(マイナンバー)を記載したそれぞれの書類と本人確認書類のコピーを同封すれば問題ありません。
3.提出先:住所変更する前の所轄税務署長宛て
提出先は「住所変更する前の所轄税務署長宛て」です。
管轄の税務署が変更になる場合、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を元の住所の税務署に送るのか、新しい住所の税務署に送るのか迷いますよね。
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」は、それまで管轄していた税務署に「ほかの納税地に異動します」と届け出るものです。
そのため、前の住所を管轄する税務署に送る必要があります。
間違って新しい住所の所轄税務署に送らないように注意しましょう。
4.提出期限:できるだけ早め
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」の提出期限は明確に定められておらず、「できるだけ早め」と指定されています。
おすすめのタイミングとしては、「個人事業の開業・廃業等届出書」と一緒に提出するといいでしょう。
必要な添付書類が共通しているので、準備の手間が一度で済みますよ。
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」の提出についてもっと詳しく知りたい方は、国税庁の公式ホームページを参考にしてください。
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振替納税を利用している事業主の場合まとめ
「管轄の税務署が変わらない場合・変わる場合」の必要な手続きをお伝えしました。
そのほかにも、場合によっては必要な手続きがあります。
ここでは、「振替納税を利用している事業主」のケースをご紹介しましょう。
銀行口座振替で納税をおこなっている事業主は、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」の提出が必要です。
提出先や期限について詳しく見ていきます。
1.提出書類:預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書
振替納税を利用している場合、新しい住所でも引き続き利用するためには「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を提出する必要があります。
振替納税とは、金融機関の口座から自動的に口座引き落としで納税する方法です。
手動で納税する必要がないので手間を省くことができ、納税漏れを防ぐこともできます。
引き続き利用したいと考える人も多いでしょう。
「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」は、管轄の税務署の窓口で入手するか、あるいは国税庁の公式ホームページからダウンロードできます。
2.提出先:住所変更した後の納税地の税務署もしくは本依頼書に記入した金融機関
「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」の提出先は、新しい住所を管轄する納税署もしくは本依頼書に記入した金融機関です。
いずれかに提出すれば問題ありません。
ただし、変更前の住所に提出しても受け付けられませんので、注意しましょう。
3.提出期限:できるだけ早め
「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」の提出期限に明確な定めはなく、「できるだけ早め」の提出と指定しています。
忘れてしまわないように、引っ越しが決まったら迅速に届け出るといいですよ。
ほかの書類と同様、1ヶ月以内を目安に早めに提出しましょう。
詳しく知りたい方は、国税庁の公式ホームページをご覧ください。
従業員に給与を支払っている場合のまとめ
個人事業主として事業をおこなうなかで、従業員を雇用して給与を支払っているケースもあるでしょう。
従業員に給与を支払う個人事業主の住所が変更になった場合、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出が必要です。
自分だけではなく、従業員にも関わることなので、しっかりと手続きをおこないましょう。
さっそく見ていきます。
1.提出書類:給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
従業員に給与を支払う個人事業主が住所変更をするときは、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出します。
これは、従業員に給与を支払い始めるときに提出した書類ですね。
届け出ている内容が変更になるので、新しい内容で再度提出する必要があります。
2.提出先:住所変更する前の納税地の税務署
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出先は、住所変更する前の管轄の税務署です。
基本的に、以前提出した書類の内容が変更になった場合は、そのとき提出した税務署に新しい内容で届け出ることになります。
間違えて「住所変更した後の管轄の税務署」に提出することのないようにしましょう。
窓口に直接提出するか、郵送で提出できますよ。
3.提出期限:事務所移転等の事実があった日から起算して1ヵ月以内
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出期限は、事務所移転等の事実が合った日から起算して1ヶ月以内です。
提出期限が土曜・日曜・祝日等に当たる場合は、これらの翌日が期限になります。
詳しくは国税庁の公式ホームページを参考にしてください。
海外に引っ越す場合のまとめ
「個人事業主として海外で働きたい」と考えて引っ越す方もいるのではないでしょうか。
個人事業主が海外に引っ越す場合、「居住者」か「非居住者」かによって手続きが異なります。
海外に引っ越して予定滞在期間が1年を超える場合は「非居住者」となり、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出して廃業を届け出なければなりません。
一方で、海外への引っ越しでも予定滞在期間が1年未満の場合は「居住者」とみなされ、国内の住所を管轄する税務署に納税します。
海外への引っ越しで予定滞在期間が1年以上になるときは住所変更ではなく廃業と覚えておくといいですよ。
1.提出書類:個人事業の開業・廃業等届出書
海外に引っ越して1年以上滞在するときは、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
このとき、書類には「廃業」に丸をつけましょう。
そのほか記入が必要な欄を埋めていきます。
「個人事業の開業・廃業等届出書」は税務署の窓口で直接入手するか、あるいは国税庁の公式ホームページからダウンロードしてください。
2.添付書類:12桁の個人番号の記載と、本人確認書類の提示またはコピーの添付
「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するときに必要な添付書類は次の2つです。
- 12桁の個人番号(マイナンバー)の記載
- 本人確認書類の提示またはコピー
ほかの書類と共通しているので、特に問題はないでしょう。
3.提出先:住所変更する前の納税地の税務署長宛て
提出先は「住所変更する前の納税地の税務署長宛て」です。
最初に開業を届け出てから住所変更していないのであれば、同じ税務署に届け出ることになります。
税務署の窓口に直接提出する方法と、郵送で提出する方法のどちらでも提出できますよ。
すでに海外に引っ越した後でも、郵送なら提出しやすいですね。
ただし、国内から送るよりも郵便料金が高くなりやすいので、できれば引っ越す前に提出するといいでしょう。
4.提出期限:廃業後1ヵ月以内
「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出期限は廃業後1ヶ月以内です。
とはいえ、実際に廃業するわけではないので、いつ提出するか迷うかもしれません。
おすすめのタイミングとしては、海外に引っ越す少し前に提出しておくと安心ですよ。
記入漏れなどがあった場合でも、海外へ引っ越す前なら対応しやすいです。
海外に引っ越す場合の提出期限についてもっと知りたい場合は、国税庁の公式ホームページを確認してみてくださいね。
個人事業主が住所変更したとき税務関係以外での必要な3つの手続き
個人事業主が住所変更したときには、まず税務関係の手続きが大切でした。
しかし、税務関係以外にも必要な手続きがあります。
住所が変わったときは次の3つの手続きも忘れずにおこないましょう。
- 金融機関の手続き
- 社会保険の手続き
- 労災保険の手続き
それでは順番に見ていきます。
1.金融機関の手続き
個人事業主はお金の管理をするために、プライベートの口座と事業用の口座など複数の口座を持つことが多いです。
それぞれの口座について住所変更を届け出ましょう。
住所変更をしておかないと、金融機関からの重要な通知が届かなくなる可能性があります。
金融機関の口座に登録している住所の変更は、インターネットや窓口ですぐにできますよ。
引っ越したら早めに変更しておきましょう。
2.社会保険の手続き
社会保険に加入している場合は、住所変更のときに次の2つの書類を提出する必要があります。
- 健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地名称変更(訂正)届
- 健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届
個人事業主が所在地の変更を届け出る場合、「健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」の添付書類としてさらに「事業主の住民票のコピー」が必要です。
2つの書類のどちらも提出期限は移転から5日以内と短く設定されています。
提出先は「移転する前の住所を管轄する年金事務所」です。
提出期限と提出先に注意して、余裕を持って提出しましょう。
3.労災保険の手続き
労災保険に加入している場合は、「名称、所在地等変更届」の提出が必要です。
提出期限は、移転から10日以内と定められています。
提出先は「所轄の労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク)」です。
こちらも提出期限と提出先に注意して、早めの提出を心がけましょう。
個人事業主が住所変更する際の5つの注意点
個人事業主は住所変更に際して、あらゆる手続きが必要なことがわかりましたね。
あなたはどのケースに当てはまるのかを考えて、漏れのないように手続きを進めましょう。
ここからは、ご紹介した手続きをスムーズにおこなうためにも、注意したいポイントをお伝えします。
- 提出期限に遅れない
- 届出書の提出の際に必要なものは確認をしておく
- 必要な手続きがわからない場合は窓口に問い合わせをする
- 届出書の控えを保管しておく
- 引っ越し費用で経費になるものを確認しておく
それでは見ていきましょう。
1.提出期限に遅れない
個人事業主が住所変更の手続きでまず注意したいポイントは、提出期限を守ることです。
提出書類によっては、提出期限が明確に決まっているものがあります。
期限が短いものなら5日以内、長くても1ヶ月以内には提出が必要です。
期限までに提出しないと、納税地が変わる場合は手続きがスムーズにできなくなったり、重要な通知が届かなかったりといった不利益を被る可能性があります。
書類によって期限も提出先もさまざまです。
期限内に提出できるよう、ゆとりのあるスケジュールで準備を進めましょう。
2.届出書の提出の際に必要なものは確認をしておく
住所変更の手続で提出する書類のなかには、個人番号(マイナンバー)や本人確認書類が必要なものがあります。
手続きでなにが必要なのか、事前に公式ホームページで確認しておきましょう。
窓口で手続をおこなう場合は、忘れずに持参することが大切です。
郵送で書類を送る場合は、コピーをとって同封します。
提出書類に不備や不足書類があると、再提出しなければなりません。
3.必要な手続きがわからない場合は窓口に問い合わせをする
住所変更をするときには、あらゆる手続きがありました。
自分がどの手続をしなければならないのか、わからなくなることもあるでしょう。
もし必要な手続きについて不明点が出てきた場合は、窓口に問い合わせると案内してもらえます。
窓口に確認することで、自分にどんな手続きが必要なのかがわかります。
わからないことはしっかり確認して、漏れなく手続きをインターネット進めましょう。
4.届出書の控えを保管しておく
必要な書類を提出して終わりになっていませんか。
書類を提出したときは、控えをとって保管しておきましょう。
提出書類の控えをとっておくと、記載事項の確認が必要になったときに利用できます。
もし控えがないと、記載事項の確認が必要になるたびに提出先に問い合わせなければなりません。
記載事項の確認の手間を省くためにも、控え分も用意して担当者に受付印をもらっておくと安心です。
5.引っ越し費用で経費になるものを確認しておく
個人事業主なら、節税のためにどんなものが経費にできるか知っておきたいですよね。
引っ越しにかかる費用のなかにも、経費として計上できるものがあります。
たとえば、火災保険料は「損害保険料」として経費計上可能です。
ほかにも事業所のみの引っ越しの場合は大部分を経費にできるでしょう。
ただし、自宅兼事務所の引っ越しでは、経費に計上できるのは費用の半分ほどが限度です。
敷金など経費計上できないものもあるため、引っ越しで経費にできるものを確認しておきましょう。
住所変更の手続きにはe-Taxが便利
個人事業主の住所変更の手続きは書類を用意しなければならないと思っていないでしょうか。
実はもっと簡単な方法があります。
それはe-Taxを使った手続きです。
e-Taxとは、インターネットを使った「国税電子申告・納税システム」のこと。
パソコンやスマホから申告・納税ができます。
書類を入手したり税務署に足を運んだりする手間が省けるので、とても便利ですよ。
詳しくはe-Taxのホームページをご覧ください。
まとめ:提出先や期限について確認し、漏れがおこらないように注意しよう
今回は、個人事業主が住所変更をしたときに必要な手続きについてご紹介しました。
あなた自身の状況によって、必要な手続きは変わります。
どの手続をしなければならないのかをよく確認し、漏れのないようにしましょう。
手続きには書類の提出期限があるので、引っ越しを考えたら早めに必要書類の準備を進めておくといいですよ。
引っ越しをすると新しい場所での生活が始まり、なにかと慌ただしくなるもの。
余裕を持って準備し、手続きをスムーズにおこないましょう。