デジタル・デバイドとは?問題や原因、解決策まで詳しく解説

公開日: 2021.07.31
更新日: 2024.01.03
デジタルデバイド

IT技術が急激に発展している現代では、「デジタル・デバイド(情報格差)」が広がっています。

その中で、
「デジタル・デバイドについて正しく理解したい」
「デジタル・デバイドってそもそもどんな問題なの?」
と、思っていませんか?

そこでこの記事では、

  • デジタル・デバイドの概要
  • デジタル・デバイドによって発生する問題
  • デジタル・デバイドが起きる原因
  • デジタル・デバイドを解消するための6つの方法
  • 国や大企業によるデジタル・デバイド解消への取り組み

などについて、詳しくご紹介していきます。

本記事を読めば、デジタル・デバイドが起きる背景や解消に向けての方法まで、幅広く理解できるでしょう。
「デジタル・デバイドについてしっかりと理解したい」という方は、ぜひ最後まで読み進めてください。

デジタル・デバイドとは「情報格差」のこと

デジタル・デバイドとは「情報格差」のこと

「情報格差」という言葉を聞いたことがある方は、少なくないでしょう。
この情報格差を意味するのが、「デジタル・デバイド」です。

IT技術の急速な発展に伴い、インターネットやスマホ、PCなどのICT(情報通信技術)を活用できる人は増えています。
その一方で、環境や年齢、経済的などの理由のために、上手く活用できない人がいるのも事実です。

この、ICTを活用できる人とできない人との差をデジタル・デバイドといいます。

また、デジタル・デバイドによって、ICTを上手く活用できずに情報を得られない人を「情報弱者」と呼ぶこともあります。
情報弱者になると、プライベートや仕事などさまざまな場面で不利益になり得ることが世界中で問題視されているのです。

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デジタル・デバイドの種類3つ

デジタル・デバイドの種類3つ

デジタル・デバイドは主に、3つの種類に分けて論じられることが多いです。
まずは、3種類に分けたデジタル・デバイドの内容を詳しく見ていきましょう。

1.国際間

各国の情報格差が、「国際間デジタル・デバイド」です。

経済的、教育的、社会的レベルが各国の情報通信技術の発展に影響を与えています。
先進国では情報通信技術が進んでいますが、発展途上国ではまだまだ技術の浸透が遅れている国も少なくありません。

アメリカや日本では多くの人がスマホを日常的に使用していますが、アフガニスタンのようにいまだに狩猟生活を行なっている国もあります。
このような国によっての情報格差を、国際間デジタル・デバイドと呼ぶのです。

2.地域間

同じ日本の中でも、都心部と地方部では情報格差が存在します。
この都心部と地方部との情報格差が、「地域間デジタル・デバイド」です。

日本の地方部では、いまだにITインフラの整備が遅れている地域もあります。
過疎化や高齢化が問題となっている地域では、スマホやPCなどの情報通信機器を使う人口が少ないため、整備が遅れているのです。

3.個人・集団間

情報格差は、国や地域だけではありません。
年齢や性別、学歴などの違いによっても、情報格差は生じます。

生まれた時からインターネットが身近にある若い世代と高齢者とでは、ICTを使いこなすスキルに差が生まれるのは明らかです。

また、年齢だけでなく育った環境や性別、通った学校などによっても情報格差は生まれるといわれています。
このような個人間や集団での情報格差を、「個人間、集団間デジタル・デバイド」と呼びます。

デジタル・デバイドによる問題5つ

デジタル・デバイドによる問題

デジタル・デバイドは、日本だけでなく世界中の問題であることがわかりました。
では、デジタル・デバイドによって、どのような問題が発生するのでしょうか?

ここでは、デジタル・デバイドによる5つの問題を以下の通りに解説していきます。

  1. 貧富の差が拡大
  2. 犯罪リスク
  3. 高齢者の孤立
  4. 人材の不足・流出
  5. 国際競争力の低下

それでは順番に見ていきましょう!

1.貧富の差が拡大

現代では、IT関連のビジネスが主流となってきています。
世界の時価総額のトップを誇るのも、AppleやマイクロソフトなどをはじめとしたIT企業です。

このような情勢から世界規模でみても、IT関連の仕事に就く人の収入が高いことがわかります。
今ではIT業界だけでなく、ほとんどの業界でIT技術が使用されるようになりました。
そのためIT業界に限らず、多くの企業で一般スキルとしてICTを問題なく扱えるスキルが求められるようになっているのです。

業界に関わらず、ITスキルが高い人ほど希望の企業へ就職しやすいでしょう。
その一方で、そうでない人は就職できるチャンスが減ってしまう恐れがあります。

その結果収入に差が生まれ、貧富の差が拡大するといわれているのです。

2.犯罪リスク

情報リテラシーによって、犯罪に巻き込まれた際の対応にも差が生まれます。

情報収集能力が高い人は適切な情報を手に入れて対応できるため、インターネットを介した犯罪に巻き込まれにくいでしょう。
一方、ITリテラシーが低いと、

  • 商品やサービスを比較できずに、高額商品を売りつけられる
  • インターネットウイルスにかかり、クレジットカード情報を盗まれる
  • 個人情報が流出してストーカー被害にあう

などの犯罪に巻き込まれるリスクが増えてしまう傾向があります。

3.高齢者の孤立

高齢者になるほどスマホやタブレット、PCなどの普及率は下がります。
もちろん人によって異なりますが、使用したくないと考える高齢者も少なくありません。

しかし、今はスマホで連絡を取り合う人が多い時代。
スマホを上手く扱えない、または使用しないことで、コミュニケーションの機会が減り孤立に繋がる恐れがあります。

とくに地方に住む高齢者の場合、過疎化が進み近所の人がこれからさらに減っていく可能性もあるでしょう。
物理的に人が減ることで、さらに孤立化による心身の負担が加速する恐れも考えられます。

4.人材の不足・流出

IT技術は今もなお急激な発展をつづけています。
今後もさらに多くの業界や企業で、IT技術は活用されていくでしょう。

しかし、IT人材の需要の高さに対して慢性的な人手不足がつづいているのも事実です。
そもそものIT人材が少ないのに加えて、希少なIT人材はよりよい待遇を求めて海外へ流出する傾向があります。

優秀な人材はIT分野が発展した国へ流れやすいことも、国際間のデジタル・デバイドがより深刻になっている原因のひとつなのです。

5.国際競争力の低下

国際間デジタル・デバイドには、国際競争力が低下しやすい問題もあります。

国自体の情報技術分野が遅れをとっている場合、

  • 教育
  • 労働
  • 観光
  • 政治

など、さまざまな面で他の国との情報格差が生まれます。
そうなると、国際経済や社会が抱える大きな問題へ発展する恐れも考えられるでしょう。

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デジタル・デバイドの原因6つ

デジタル・デバイドの原因

デジタル・デバイドは犯罪リスクや国際競争力の低下など、とても深刻な問題です。

では、そもそもどうしてデジタル・デバイドは起こってしまうのでしょうか?
ここでは、デジタル・デバイドが発生する6つの原因を解説していきます。

  1. 学歴や収入の格差
  2. ITインフラ・IT人材の不足
  3. 都市部と地方部の差
  4. 身体的・精神的な障がい
  5. 若者のPC離れ
  6. 高齢化

1.学歴や収入の格差

教育や生まれ育った環境に恵まれないことで、デジタル・デバイドになる人もいます。

教育は将来を決める重要な要素のひとつです。
一般的には学歴が高いほど、大手企業など収入が高い企業への就職がしやすいでしょう。
このように現代の日本においても、学歴によって就職のしやすさは異なります。

そして収入が高ければ、より質のよいPCやタブレットなどを手に入れやすくなります。
これらの理由から、学歴や収入の格差はデジタル・デバイドが起きる原因のひとつといえます。

2.ITインフラ・IT人材の不足

ITインフラの整備が遅れている国や地域では、IT機器を利用しようと思っても有効活用できません。
たとえば日本でいうと、離島や山間部にある地方部が当てはまります。

また、IT人材が不足している国や地域では、情報技術が発展している場所と比較して思うような開発をするのは難しいでしょう。
このように、場所による問題もデジタル・デバイドに大きく関わる原因のひとつなのです。

3.都市部と地方部の差

日本でも地方部では、少子高齢化や過疎化が進んでいます。

地方部で生まれ育った人も、大学進学や就職で都市部へと移住して、数十年後に再び帰ってくるケースは稀です。
そのまま都市部で家族をつくり、生活基盤を整えるケースがほとんどでしょう。

そうなると、地方部ではどんどん過疎化が進みます。
IT機器を利用する若年層が近くにいないと、高齢者はますます使用する機会を失うでしょう。

また、高齢者は情報端末を使わない傾向が高いため、IT企業も地方への進出は積極的ではありません。
このような都市部と地方部との情報格差がデジタル・デバイドの原因となるのです。

4.身体的・精神的な障がい

日本の身体的、精神的な障がいがある人の割合は7.6%というデータが出ています。

(出典:内閣府)

身体や精神的な障がいを持った人は、健常者よりも情報を取得できる量が少なくなってしまいます。
環境や場所だけでなく、身体や精神的な障がいの有無もデジタル・デバイドの原因のひとつとなるのです。

5.若者のPC離れ

現代のスマホは、ほとんどPCと同じほどの性能を持っています。
スマホ1台であらゆる機能が利用できることで、若者のPC離れが進んでいるのも事実です。

とくに日本では若者のPC離れがみられ、スマホは使いこなせてもPCの操作や設定方法は苦手という人も少なくありません。

日常生活ではスマホがあれば困らないかもしれませんが、ビジネスではまだまだPCが必要です。
スマホに慣れていて、インターネットを使いこなしているように見える人の中にもデジタル・デバイドは存在します。

6.高齢化

世界中でもとくに日本は高齢化が進んでいる国として有名です。
そして年齢が高くなるほど、スマホの普及率も下がっています。

総務省の調査でも、20代、30代は90%以上のスマホ保有率なのに対して、70代は18.8%、80代は6.1%という結果が出ました。

(出典:総務省 「スマートフォンの個人保有率の推移」)

このデータからもわかるように、年齢によるスマホ保有率は大きく変わるのです。

スマホは場所に関係なく、インターネット環境さえあればすぐに情報収集ができます。
そのため保有している人としていない人とでは、情報格差が生まれるといえるでしょう。

デジタル・デバイドの解決策6つ

デジタル・デバイドの解決策

デジタル・デバイドになると貧困や高齢者の孤立など、あらゆる問題が起きる可能性があることがわかりました。
また、ここまででデジタル・デバイドに陥る原因についても理解できたでしょう。

では、どうすればデジタル・デバイドを解決できるのでしょうか?
ここからは、デジタル・デバイドの6つの解決策を以下の通りにご紹介します。

  1. IT人材の増加
  2. 高齢者への支援
  3. スマート機器の普及
  4. 無料で利用できる端末の設置
  5. インターネット利用目的の見直し
  6. 国際間のIT交流

1.IT人材の増加

IT人材の不足はデジタル・デバイドの大きな原因のひとつです。
まずは、IT業界全体の人材を増やすことが大きな課題といえます。

現代ではプログラミングが義務教育化されたり、ITスクールが増えてきました。
それでも、まだまだ地方部には少ないのが現状です。

都心部だけでなく、地方部へもITスクールなどを設立すれば、現地でIT人材を育成できます。
地方部でもIT人材が増えることでインフラの設備が進んだり、企業進出が行われ地域活性化にも繋がるでしょう。

また、一人ひとりがプログラミングスキルなどIT関連知識に興味を持つことも大切です。
プログラミングスキルを身につけるメリットについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

プログラミングスキルを身につける3つのメリットとはプログラミングスキルを身につける3つのメリットとは。効果的な学習方法も解説

2.高齢者への支援

高齢者へのICT利活用支援を行うのもひとつの解決策です。

高齢者への支援には、

  • 高齢者向けのITスクールの増加
  • 高齢者向けの電子機器端末の開発
  • 高齢者向けの電子機器サポートの増加

などが挙げられます。

このような高齢者へのIT支援を行うことで、年齢によるIT機器へのハードルを下げやすくなるでしょう。

3.スマート機器の普及

スマート機器のさらなる普及も、デジタル・デバイドの解消へ繋げられると考えられます。
とくにスマート機器の普及率が低い高齢者へと普及することで、大きな効果が見込めるでしょう。

たとえば、家族が祖父母とスマホで連絡を取るようになれば、高齢者世代も自然にスマート機器に触れる機会が増えます。

スマート機器があれば、家から出なくても簡単にテレビ電話でコミュニケーションを取ることも可能です。
高齢者世代にとっても、IT機器を使えることで生活がとても楽になるでしょう。

4.無料で利用できる端末の設置

収入が低い世帯など、金銭的な理由から情報機器を手に入れられない人もいます。
スマホやパソコン、タブレットなどに触れる機会がなければ、それだけデジタル・デバイドに陥る可能性も高いでしょう。

このような人たちのために、無料で利用できる端末を設置するのもひとつの解決策です。
学校や公共図書館などの公共施設に設置しておけば、より多くの人に情報機器に触れるチャンスが増えるでしょう。

また、廃棄処分される予定の端末をリユースして提供する方法も考えられます。
とはいえ、このような活動は現状では多く行われていないのが現状です。

5.インターネット利用目的の見直し

デジタル・デバイドは高齢者に限らず、誰もが陥る可能性がある問題です。
日本に生まれた若い世代の人も、気が付かない間にデジタル・デバイドになる可能性も考えられます。

なぜなら、インターネットをただ趣味や娯楽のためだけに利用しているだけでは、いつの間にか社会との格差が生まれる可能性も考えられるからです。

「娯楽だけに情報機器を使う人」と「仕事に活かすために情報機器を使う人」とでは、ITリテラシーに大きな違いが発生するのは明らかです。
自分には関係ないとは思わずに、今一度インターネットの利用目的を見直してみましょう。

6.国際間のIT交流

デジタル・デバイドは、日本だけの問題ではありません。
国際間デジタル・デバイドを解消するためには、発展途上国と先進国との間でIT交流を行う必要があるでしょう。

世界各地では、いまだにITインフラが整っていない国も存在します。
そういった発展途上国でインフラ設備を先行投資すれば、大きくビジネスを展開できる可能性もあります。

また、発展途上国からITスキルを学びたい人をスクールで教え、各自の国の発展に活かしてもらう方法もあるでしょう。
このように、国際間のデジタル・デバイドを解消する方法にはさまざまなものがあります。

デジタル・デバイド解消への取り組み

デジタル・デバイド解消への取り組み

国やIT大手企業では、デジタル・デバイド解消へのさまざまな取り組みを行なっています。
デジタル・デバイドへの理解や関心を深めるためにも確認しておきましょう!

1.総務省

総務省では、「デジタル・デバイド解消に向けた技術等研究開発(情報通信利用促進支援事業費補助金)」を行なっています。

高齢者や障害者向けの通信などの高速化に関するものの、研究及び開発にかかる資金を一部支援する制度です。
デジタル・デバイドになりやすい高齢者や障害者への通信・放送サービスの充実させることを目的として、平成9年度から実施されています。

公募制が採用されているため、気になる方は確認してみてはいかがでしょうか。
公募期間は、毎年3月上旬〜4月上旬の約1ヶ月間です。

(出典:総務省)

2.Softbank

SoftBankと子会社のエデュアス、東京大学先端科学技術研究センターは共同で、「魔法のプロジェクト」を2009年から実施しています。

事業内容は、障がいのある子どものための携帯情報端末の活用事例研究です。

学校にタブレットや人型ロボット「Pepper」を一定期間の間無償で貸し出します。
そして学習や日常生活の場での活用を通し、障がいのある子どものコミュニケーションや認知の方法としてICTの可能性を研究しているのです。

(出典:SoftBank)

3.Microsoft

MicrosoftとOpen Data Instituteは共同で、「Education Open Data Challenge」という活動を2020年から実施しました。

新型コロナウイルスのパンデミックを受け、世界中の学生がどのような影響を受ける可能性があるのかを教育者や研究機関がよりよく理解する手助けをしていく活動です。

Education Open Data Challengeは、世界中の学生がデジタル・デバイドを解消して、同じ土俵で競えるようになるのを目的としたチーム戦です。

優勝したチームには5万ポンドの賞金が、準優勝チームは3万ポンドと2万ポンドの賞金を授与されました。

(出典:共同通信PRワイヤー)

4.KDDI

KDDIでは、発展途上国の基盤整備に取り組んでいます。

インターネットにアクセスできない圏外移住者が、東南・南アジアでは約3億人存在することをご存じですか?
KDDIではそんなアジアの途上国において、通信インフラの整備と、安価で高品質な通信サービスの提供を行なっています。

ミャンマーでは通信サービス環境整備を進めており、現在では全土で「スマホ」によるコミュニケーションを楽しむ姿が見られるようになりました。

また、地域間デジタル・デバイドの解消のために、地方部でICTを支える企業や人の育成にも取り組んでいます。

(出典:KDDI)

まとめ:デジタル・デバイドへの理解を深めよう

今回はデジタル・デバイドについて詳しくお伝えしました。
デジタル・デバイドは、誰もが関係する問題であることを、わかっていただけたのではないでしょうか?

ただ情報に触れる機会が多いだけでは、情報格差を解消できるわけではありません。
日常的にスマホを利用している世代の人も、他人事だと思わずにデジタル・デバイドの問題に目を向けていきましょう。

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今ではプログラミングを学習できる環境は整ってきており、チャレンジするハードルも下がってきています。

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