個人事業主が税務調査されやすくなる6つの特徴と調査時の対応方法を徹底解説
「税務調査は個人事業主に来ない」
「調査されるのは法人だけでしょう?」
と思っていませんか?
たしかに法人に比べたら、個人事業主に税務調査がくる確率は低いかもしれません。
しかし、いざ自分に税務調査が来てしまったら困りますよね。
そこで今回は、税務調査対象になりやすい個人事業主の特徴と対策について解説していきます。
- 税務調査がはいりやすい個人事業主の特徴
- 個人事業主の税務調査の対策
- 税務調査の注意点
この記事をみれば、個人事業主の税務調査がきても慌てずに対応できます。
ぜひ最後までご覧ください。
そもそも税務調査とは?個人事業主が覚えておくべき3つのポイント
「税務調査」と聞くと、重いイメージがある方もいらっしゃるでしょう。
税務調査は国税庁直轄の組織による訪問調査のことです。
では、どのような目的で実施しているのか以下、3つのポイントに沿って説明します。
- 税務調査の目的は「申告内容の整合性」を確認すること
- 調査を受ける確率は高くはないが注意が必要
- 税務調査は基本的に拒否できない
まずは、税務調査に関する実態を理解するために目的を見ていきましょう。
1.税務調査の目的は「申告内容の整合性」を確認すること
税務調査の目的は「申告内容の調合性」を確認することです。
日本は申告納税制度なので「1年間で1,000万円売りあげたので、○○円納税します。」と自分自身で申告します。
中には計算を間違えてしまったり、正確に納税しない人がいるかもしれません。
そのため、具体的に以下のことを確認しています。
- どんぶり勘定をしていないか
- 本来はその期の売り上げなのに翌期の売り上げにしていないか
- 棚卸し在庫を過少に見積もっていないか
- どの取引先から何を受注、納品、決済しているか
- 棚卸しの計上漏れはないか
- 帳票類の整合性は適切か
- 私的費用の経費計上はないか
- 人件費の管理状況はどうか
- 収入印紙の未貼り付けはないか
このようにして整合性を確認しつつ意図的かどうかを細かく、厳しく見ているのです。
2.調査を受ける確率は高くはないが注意が必要
個人事業主の場合は確かに調査を受ける可能性はそこまで高くありません。
ですが、万が一調査を受けることになると、さまざまな面で仕事に支障をきたしてしまいます。
最悪の場合、事業継続が難しくなることもあるでしょう。
たとえば以下のケースです。
- 税務調査の結果が悪く強制捜査(いわゆるマルサ)が動く
- 毎週のように国税庁に通わなければならなくなる
- 脱税者として裁判所にいく
- 実刑判決がくだる
こうなってしまうと、取引先にも迷惑がかかってしまいます。
確率は低いですが、上記のケースを防ぐためにも前もって準備する必要があります。
3.税務調査は基本的に拒否できない
税務調査は基本的に拒否することはできません。
税務職員は「質問検査権」を持っているためです。
当該職員は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し提示若しくは提出を求めることができる。
この「できる」といった表現は解釈が難しいですが、納税者にも「受忍義務」があります。
当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
(出典:国税通則法 第128条)
上記のような税務職員の質問検査権を拒否した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科される可能性があります。
厳密には拒否できますが、懲役または罰金を払う可能性が高くなるのです。
逃げたくなる気持ちはわかりますが、逃げずに立ち向かいましょう。
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個人事業主の中でも税務調査されやすい業種の特徴
個人事業主の中でも税務調査されやすい業種には共通点があります。
主に申告漏れが多い企業が注目される傾向があります。
実際のデータを見てみましょう。
以下は不正割合の高い3業種(平成30年度)となります。
順位 | 業種 | 不正割合 |
1 | バー・クラブ | 70.3% |
2 | 外国料理 | 46.7% |
3 | 大衆居酒屋・小料理 | 46.3% |
例えばバーやクラブ、小料理屋など街中にある飲食店は不正が発見されやすい業種です。
他にも土木工事やパチンコ店などが調査されやすい傾向にあります。
不審に思われる原因は?税務調査が入りやすい個人事業主の「6つの共通点」
税務調査が入りやすい個人事業主は、以下の6つの特徴があります。
- もともと申告していない
- 売り上げが伸びてきている
- 売り上げにおかしな数字がある
- 経費にならないような申告がある
- 消費税が課税されない範囲の売り上げが続いている
- 金銭のやり取りは現金が中心
税務調査は、お金の動きが大きくなるにつれて調査対象になる可能性が高まっていきます。
どのような時に調査対象になるのかを、細かく解説していきます。
1.もともと申告していない
そもそも申告をしていない人は要注意です。
なぜかというと、いずれ申告していないことがバレてしまうからです。
申告していない人がバレてしまう理由は以下のケースが多くあります。
- 店舗の存在
- サイトの存在
- 税務署に集まったデータ
- 密告
取引先に税務調査が入った場合に取引や金額がすべて明らかになります。
当然ですが、取引には「支払う相手」がいます。
そのため、自分1人が隠せたとしても、周囲から申告漏れがバレるケースは少なくないのです。
2.売り上げが伸びてきている
売り上げが伸びている会社は注意が必要です。
これは売り上げが伸びるということは、節税の意識が高くなるためです。
よくある例が売り上げが多くなると「経費の比率が多くなる」ことです。
- 売り上げが伸びているのに利益が変わらない
- 同業他社と比べて利益率が低い
- 毎月の利益率が変わらない
上記は経費が高くなると多くなる傾向です。
このような傾向は税務調査をする側も熟知しているので、税務調査を受けやすくなる傾向があります。
3.売り上げにおかしな数字がある
売り上げにおかしな数字がある場合は、不審と思われても仕方ありません。
ずっと好調だった売り上げが1ヶ月だけものすごく下がるなどは、誰が見ても不思議に思うことでしょう。
その他にも、下記のような点は不審に思われがちなケースです。
- 売り上げの著しい変動(波が激しい)
- 経費が必要以上に増加している
- 原価率も変動している
税務署は、過去の決算書の推移も分析しています。
売り上げを少なくするなど、おかしな数字があると税務職員が「あれ?」と不審に思うので気をつけましょう。
4.経費にならないような申告がある
確定申告などで、経費につながらない不審な項目が多いものは税務調査の対象になりやすいです。
とくに会社の経費とプライベートの出費との線引きが難しい経費は要注意です。
例えば以下です。
- スーツ
- 個人事業主自分自身の健康診断
- 高額な交通費
フリーランスでカメラやパソコンを使用している場合、業務用かプライベート用か第三者が見たら判断が難しい傾向があります。
誰が見ても仕事で使っているものとわかるように、経費として計上する際は目的を明確にしておくことが無難です。
5.消費税が課税されない範囲の売り上げが続いている
消費税が課税されない範囲の売り上げが続いていると、不審に思われます。
なぜなら消費税が課税されない「免税事業者」は、消費税を払うか払わないかの分岐点になるからです。
「免税事業者」は以下のような条件があります。
- 課税売り上げ金額が1,000万円未満
- 事業開始から2年以内であること
例えば、毎年課税売り上げ金額が900万円〜999万円だとどうでしょうか。
課税範囲にギリギリ満たない水準が続いていると、税務署からすると疑問に感じざるをえないでしょう。
6.金銭のやり取りは現金が中心
現金で取引している業種を税務署はマークしています。
現金の受け渡しは、記録が残らないからです。
相手先が「支払調書」を出していると、現金の受け渡しの記録が残ります。
例えば以下です。
- A社からB社に1,000万円支払っている
- B社ではA社から1,000万円の受け取りの記録がない
上記のような不審点を税務署は探しているのです。
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税務調査はどのように進む?覚えておきたい5つの流れ
税務調査がどのような流れでおこなわれているか一般的な流れを説明します。
- 調査が入りやすい時期は夏頃
- 一般的には事前に通知が来る
- 調査は1〜2日かかることもある
- 結果の連絡が税務署からくる
- 修正点があれば修正申告書を提出
税務調査は怖いイメージがありますが、家宅捜査のように勝手に引き出しを開けられたり、書類を押収されたりしません。
必要以上に気負わず、冷静に対応しましょう。
1.調査が入りやすい時期は夏ごろ
調査が入りやすいのは毎年夏頃です。
毎年7月10日が税務署職員の人事異動日のため、この辺りは税務署まわりは慌しくなる傾向があるのです。
7月頃から文書や電話など、さまざまな方法で連絡がきます。
いつでも対応できるよう、事前に準備をしておきましょう。
2.一般的には事前に通知が来る
税務調査は一般的には事前通知があります。
顧問弁護士がいる場合はまずは、税理士に事前連絡がいき税理士が税務署と納税者の間に入って税務調査を実施します。
ここで注意したいのが、税務調査は必ず事前通知があるわけではありません。
事前通知すると適正な調査遂行に支障をおよぼす恐れがあると判断されると、事前通知しないこともあります。
(出典:国税通則法第74条の10)
3.調査は2~3日かかることもある
調査の期間は通常2〜3日、長いと1週間程度かかります。
膨大な数の書類をチェックするので、それだけの時間がかかります。
- 納品書
- 領収書の控え
- 請求書
- 契約書
- 総勘定元帳
- 議事録
- 稟議書
上記のことをしているから1日単位では終わらず、長くなると1週間ぐらいかかることもあります。
多くの書類を調べるので、決して即日で終わるわけではないのです。
4.結果の連絡が税務署からくる
結果連絡が税務署から届きます。
調査のうえで問題点があれば、いくつか質問されるでしょう。
その後指摘事項・質問事項を解消するための確認作業に入り、問題がなければ調査結果報告にその旨が記載、通知されます。
指摘事項がない場合 | 「更生決定等をすべきと認められない」旨の書面を受け取り税務調査は終了 |
指摘事項がある場合 | 「修正申告書」を提出 |
内容によっては、何度も税務署とやりとりをする場合もあります。
税務署側の指示に従って、適切に対応するようにしましょう。
5.修正点があれば修正申告書を提出
修正点があれば修正申告書を記入して提出する必要があります。
この修正申告をしないと、所得税や住民税を正しく計算できないからです。
修正申告書についてまとめる内容は以下です。
- 修正申告:会社が指摘を受け入れる場合提出します。
- 更正決定:修正申告を不服とし、あえて修正申告をせず選択税務署長が追徴本税を通知する処分のことです。
税務調査の指摘を受けた場合は、修正申告書を作成し、追加の税金を納付します。
この指摘が「隠蔽・偽装」など悪質と判断されると最悪の場合、青色申告の承認取り消し処分を受けることもあります。
事前連絡が来たら当日までにやっておくべきこと3つ
個人事業主で税務調査の連絡が来た場合は当日までに以下の3つをやっておきましょう。
- レシートなどは整理しておく
- 書類はすぐに出せるようにしておく
- 思い切って税理士に相談する
税務調査を恐れる心配はありません。
初めての調査はできるだけ準備に専念して、当日はリラックスできるようにしたいものです。
それぞれの項目を細かくみていきましょう。
1.レシートなどは整理しておく
税務調査で、何のお金なのか聞かれたときにすぐに答える必要があります。
領収書やレシートはきちんと整理して保管しておきましょう。
- 土日のコンビニの領収書が多くないか
- デパートの領収書
- 領収書の但し書きはあっているか
このような細かい部分までチェックします。
デパートの領収書から何を何個買ったなど調べ上げるのです。
領収書を求められた時にすぐに出せない=整理していない・問題があるのでは?と税務職員に不審に思われます。
また、2020年10月より電子帳簿保存法の改正があり以下は電子保存でも可能になりました。
- ネット上の領収書データ
- クレジットカードの利用明細
- 交通系ICカードのデータ
- スマホ決済のデータ
自分ですべてやるのはハードルが高いので、税理士に依頼するか新しい電子帳簿保存法に対応した会計システムを使うのもひとつの手です。
以上のことから、求められたときにすぐに対応できるようレシートは整理しておくべきです。
2.書類をすぐ出せるようにしておく
書類はすぐに出せるようにしましょう。
領収書や帳簿など根拠となる書類は7年間は保管する義務があります。
青色申告の特徴は以下のとおりです。
- 帳簿や決済関係の資料は7年間保管
- その他書類は5年間保管
一方、白色申告では下記のようになっています。
- 収入金額や経費が記載されている帳簿は7年間保管
- その他書類は5年間保管
税務調査で開示を求められた際に、すぐに開示できるように年ごとにまとめて整理しておきましょう。
3.思い切って税理士に相談する
当日の対応が不安であれば、税務調査前に税理士と契約もできます。
税理士に依頼すれば、正確で手早く処理できるでしょう。
「自分一人ではうまく対応できないかもしれない…」と思うくらいなら税理士に思い切って依頼するのもひとつの方法です。
税務調査専門の税理士もいるので、ぜひ検討してみてください。
税務調査のリスクを減らすために個人事業主が知っておくべき3つの注意点
税務調査で調査官はどのようなところをみているのかを知りたい方も多いでしょう。
税務調査をできるだけ避けるためにも、以下の3つを意識しておくことがおすすめです。
- 雑な経費計上をしない
- 現金の取り扱いは慎重に
- SNSでの立ち振る舞いも意識する
調査員はただ帳票の文字をみているだけではありません。
経営者の性格、発言、従業員の言動などもチェックしています。
では、それぞれの項目を深掘りしていきましょう。
1.雑な経費計上をしない
雑な経費計上はしないようにしましょう。
なぜなら調査員の信頼を失うだけでなく税務調査の時間がかかるためです。
例えば以下です。
- 勘定科目を雑費にしがち
- 宛名や金額を自分で書いてしまう
- そもそも領収書がない
税務調査時間を短くするためにも、煩雑な経費計上はしないように心がけましょう。
2.現金の取り扱いは慎重に
ずさんな現金管理は税務署からの信頼を失うことに繋がりかねません。
ここでいう現金とは以下のような現帳簿上の現金のことです。
- ありもしない現金が計上されている
- 現金勘定がマイナスになっている
例えば、ありもしない現金が計上されているのであれば「領収書の紛失」「従業員が使った」などが考えられます。
現金勘定がマイナスなら「立て替えていた経費を現金出納帳に記載した」「社長がお財布から補充したが出納帳に記載していない」などがあります。
上記のような事象が発生してしまうと、決算書の整合性が疑わしくみられても仕方がないでしょう。
金銭のやりとりを現金でおこなう際は、細心の注意を払うようにしましょう。
3.SNSでの立ち振る舞いも意識する
最近では個人事業主で仕事をする上でSNSを活用する場合もあります。
WEBサイトはもちろん、TwitterやFacebook、Instagramなども税務職員はチェックします。
例えば、SNSであまりにも羽振りのいい言動を取っていると、税務職員側からすると気になる項目になりうるのです。
誰がみてもいいような形で、SNSを運用することが得策です。
まとめ:個人事業主宛の税務調査は誠実に対応すれば問題なし
今回の記事では、個人事業主の税務調査を詳しく解説しました。
- 税務調査は正しく帳簿付けを行っていれば問題ない
- 個人事業主にくる確率はあまりない
- 税務調査は拒否することができないので、来たら嘘をつかず誠実に対応する
税務調査で指摘を受けても、少額で収まるケースもあります。
普段から正しくおこない帳簿付けをすれば税務調査は怖くありません。
税務調査が面倒だったり、不安だと思う人は転職するのもいい方法です。
この機会に税務調査が来ることを想定して対策を考えてみてください。