フローチャートを使ったアルゴリズムの書き方をわかりやすく解説
「アルゴリズムを表すフローチャートって何?」
「フローチャートの記号を理解して、処理が書けるようになりたい」
と思うことはありませんか?
フローチャートが書けると、プログラムを書く前にアルゴリズム(手順)をまとめたり、処理の流れを誰かに説明したりできるので、とても便利ですよね。
では、基本的なフローチャートの書き方をマスターするには、どのようなことに気を付けて書いていけば良いでしょうか。
そこで今回は、
- アルゴリズムの流れが書けるフローチャートとは
- フローチャートの主な3つの種類
- フローチャートを書くためのアプリや本の紹介
について詳しく解説します。
この記事を読めば、アルゴリズムの流れをフローチャートで書けるようになり、現場でプログラムを作る際に活用できます。
ぜひ、最後まで読んでみてくださいね。
アルゴリズムはフローチャートを使って書くと理解しやすい
アルゴリズムとは「問題を解くための手順」のことをいいますが、処理が複雑になると現状がどうなっているのか整理しにくくなります。
そのため、アルゴリズムを導き出すには、たくさんのデータを「どのようにまとめたら簡単にプログラムできるか」という視点で、処理の道順を考える必要があります。
ここからは、アルゴリズムが書けるフローチャートについて解説します。
- フローチャートとは
- フローチャートの記号
以降でそれぞれ詳しくみていきましょう。
1.フローチャートとは
フローチャート(流れ図)とは、プログラムを構成する個々の処理が、どのように進んでいくかを示すものです。
処理の流れを示す図で、フロー(flow=流れ)チャート(chart=図)と呼ぶからです。
主にアルゴリズム(問題の解き方)を考えるために使われ、処理が進んでいく様子を「処理が流れる」と捉えて上から順番に命令を書いていきます。
プログラムになる前の表現方法なので、フローチャートで書いたものはプログラムの処理手順に変換可能です。
ですので、いきなりプログラムを書くのではなく、わかっている部分をフローチャートに書いてアルゴリズムを整理できます。
2.フローチャートの記号
フローチャートの記号を使うと、簡単に処理の流れを記述できます。
四角やひし形の記号を、線や矢印でつなぐだけで、直感的にプログラムがわかる仕様になっているからです。
例えば、図記号の中には、日本語を書いても、数式を書いてもプログラムの命令を書いても構いません。
処理の流れを表すことが大切で、簡潔に処理の内容や条件を書いて補足するのです。
また、フローチャートの記号は、基本的に上から順番に命令が処理されます。
そのため、上から下に向かって流れる処理には、矢印をつける必要がなく、上から下でないときだけ、処理の流れを矢印で示します。
※フローチャートで使われる主な図記号
図記号 | 名称 | 意味 |
---|---|---|
端子 | はじまりとおわりを示す。 アルゴリズムの最初と最後に使う。 |
|
処理 | 処理を示す。 通常の順番でおこなっていく命令に使う。 |
|
判断 | 分岐をおこなう条件を示す。 条件によって処理が枝分かれするときに使う。 |
|
ループの開始 ループの終了 |
2つの図記号のペアで、 繰り返し行う処理を囲む。 |
|
定義済み処理 | 「まとまった処理」を示す。 シンプルなフローチャートにできる。 |
フローチャートを使ったアルゴリズムの書き方|コツ3選
フローチャートを作成する目的は、プログラムをわかりやすく図式化することです。
そのため、書き方のルールを守り、正確に記述することが大切になります。
- 複雑な処理を分けて記述し、シンプルにまとめる
- プログラムが動く順(上から下へ)に要素を配置する
- アルゴリズムの流れを意識して、記号はハッキリと文言は簡潔にまとめる
以降でそれぞれ解説していきます。
1.複雑な処理を分けて記述し、シンプルにまとめる
フローチャートは処理の流れを意識して、一処理づつ書いていきます。
初心者のうちは、幅広く書かないのがポイントで、条件や判断で処理が分かれる部分に焦点をあててシンプルに書くのがコツです。
処理の目的を正しく把握して、不要な部分は書かないようにしましょう。
2.プログラムが動く順(上から下へ)に要素を配置する
基本的にプログラムは上から順番に実行されます。(順次処理)
なので、命令は複数指定できますが、処理が行われる順番に書いていきます。
もし、分岐やループではじめに戻ったとしても、また上から順にプログラムが実行されるのです。
ですので、要素の配置はプログラムの流れに沿っておこないましょう。
3.アルゴリズムの流れを意識して、記号はハッキリと文言は簡潔にまとめる
フローチャートは誰がみてもわかるように書いていきます。
ボックス内の処理は簡潔に短い文章でまとめるのがコツで、長い説明だと共有した際に理解されにくいからです。
なので、ハッキリと言い切る文言でまとめてあげましょう。
Tax Calculationアルゴリズムをフローチャートで書く3つのメリット
アルゴリズムをフローチャートで書くとどのようなメリットがあるでしょうか。
ここからは、3つのメリットについて解説します。
- 処理の流れを決めることで、プログラミングの質とスピードが向上する
- 形を見るだけでアルゴリズムに間違いがないかチェックできる
- ひとつのアルゴリズムをいろいろなプログラミング言語で応用できる
それぞれみていきましょう。
1.処理の流れを決めることで、プログラミングの質とスピードが向上する
プログラムを書く際は、何をどう処理すれば、結果が得られるか?(アルゴリズム)を考えて処理を書いていきます。
アルゴリズム(問題の解き方)を考えながらコーディングすると、プログラムの間違いや不足に気づかないこともあるからです。
フローチャートで処理の流れを決めておくと、プログラムに必要な要素を把握しやすく、一見難しい処理でも、俯瞰して簡単にプログラミングできるメリットがあります。
ですので、結果的にコーディングの質とスピードの向上につながります。
2.形を見るだけでアルゴリズムに間違いがないチェックできる
フローチャートの記号は、分岐はひし型・ループはペアと要素の形が決まっているので、ぱっと見るだけでプログラミングに必要なコードを連想できます。
さらに、プログラムが正しく動作するかテストするときでも、条件分岐のパターンをテスト仕様書に反映でき、正確なテスト項目の洗い出しと実施が可能です。
正確なテストをおこなうことで、プログラムのバグを減らし、アルゴリズムの間違いにも気づけるのでメリットといえます。
3.ひとつのアルゴリズムをいろいろなプログラミング言語で応用できる
最初から自分でアルゴリズムを考えるのは簡単なことではありません。
ですが、他の人が作ったアルゴリズムを見ることで、難しい処理にも対応できます。
実際にプログラミングの基本的なコーディングの型は、言語は違っても似ているので、アルゴリズムをいろいろな言語に応用させて問題解決ができるのです。
ですので、いろいろなアルゴリズムを理解していると、フローチャートを書く際に答えを出しやすくなります。
アルゴリズムの代表的な種類一覧|それぞれの特徴を徹底的に解説フローチャートでアルゴリズムを書いた3つの事例を見てみよう
フローチャートの記号を結んで表示される流れの種類には「順次」「分岐」「繰り返し」があり、これらはアルゴリズムの3つの基本構造を表しています。(「順次構造」「選択構造」「反復構造」)
3つの基本構造を組み合わせることで、いろいろなアルゴリズム(問題の解き方)を作れるのです。
- 順次のフローチャートの例
- 分岐のフローチャートの例
- 繰り返しのフローチャートの例
ここからは、それぞれの事例をみていきましょう。
1.順次のフローチャートの例
順次は、上から下に向かって処理が順番に進んで行く流れです。
ここでは「おきる」「きがえる」「ごはんをたべる」という処理が上から下に向かって進んでいきます。
なので、順次処理をおこなう場合は、上から順にプログラムが実行されることを考慮して要素を配置していきましょう。
2.分岐のフローチャートの例
分岐は、「もし〇〇なら△△する」のように条件に応じて処理が分かれる流れです。
条件に合ったときの処理を用意して、条件に合ったときだけその処理をおこなわせることができます。
ここでは「おでんのセール」という条件がYesなら「おでんを買う」という処理に分かれ、Noなら「おにぎりを買う」という処理に分かれます。
条件分岐の処理は、その条件が成立したときだけ、その中にある命令を実行するという命令なので、二つの処理の違いを把握して要素を配置していきましょう。
3.繰り返しのフローチャートの例
繰り返しは「条件が成り立つまで繰り返す」処理の流れです。
ここでは、ループの開始と終了を示すペアの記号で囲まれた「お菓子を選ぶ」と「お金を払う」という処理が、「お金がある限り」という条件で繰り返されます。
条件はペアの記号のどちらかに記入します。
ペアの記号には、それらがペアであることがわかるように「買い物ループ」と「買い物ループ」のように、同じ言葉を記入します。
ループ(loop)とは繰り返しという意味です。
もし繰り返しが終わらなければ「無限ループ」というバグになるので注意しましょう。
アルゴリズムとフローチャートの基本や違いを丁寧に解説フローチャート作成ツール・アプリおすすめ3選
こちらではフローチャートを無料で作成できるツールをご紹介します。
- Googleスライド
- Cacoo
- diagrams.net
それぞれ解説します。
1.Googleスライド
Googleスライドは、Googleが用意している無料のプレゼンテーションツールです。
図形を組み合わせることでフローチャートが作成でき、Googleアカウントさえあれば誰でも使えるのがメリットです。
参考:Google Slides: オンライン スライドショー作成ツール | Google Workspace
2.Cacoo
Cacooはオンラインで使える作図ツールです。
フローチャートで使える記号が揃っており、図形をドラック&ドロップするだけで配置できるので、便利です。
自動センタリング機能があり、図形同士を等間隔で配置したり、大きさも簡単に揃えたりと、フローチャートの作成がスムーズに進みます。
操作性はパワーポイントやエクセルと似ており、共有機能を使うとメンバーと同時に編集も可能です。
参考:Cacoo
3.diagrams.net
diagrams.net(draw.io)は、無料で使えるオンラインの高機能作図ツールです。
アカウント登録とログイン不要で使えるほかに、デスクトップ版のアプリがあるので、ダウンロードするとオフラインでも使用できます。
拡張機能を入れると、Googleドライブや、VS CODEと連携できるので業務と並行しながらフローチャート作成が可能です。
参考:Diagrams.net
アルゴリズムの書き方が学習できる本3選
もっとアルゴリズムについて知りたい方や書き方をしっかりと習得したい方に向けて、おすすめの本をご紹介します。
- アルゴリズム入門
- 改訂版 フローチャートのかき方
- アルゴリズムを、はじめよう
書籍を読むことで、アルゴリズムの概要を押さえることができるので、いちど手に取って読んでみてはどうでしょうか。
ここからは3つの書籍をみていきましょう。
1.アルゴリズム入門
アルゴリズムを独学で学習したい人に向けた書籍です。
アルゴリズムの基本的な解説から、問題と回答を用意しているのでインプットとアウトプットのバランスが良いのがポイントです。
初めての方にはぜひご覧いただき書籍です。
2.改訂版 フローチャートのかき方
東京電機大学出版の書籍です。
フローチャートの書き方に特化しているので、アルゴリズムの中でもとくにフローチャートについて詳しく知りたい方におすすめです。
3.アルゴリズムを、はじめよう
アルゴリズムの超入門書といえる書籍です。
プログラマー向けに、必ず知っておきたい知識を最低限に絞りつつ、丁寧に解説をしています。
フローチャートも一緒に作っていけるので、初心者であれば必ず手にしたい名著です。
アルゴリズムの書き方に関するQ&A2選
ここでは、合計値と最大値を求める簡単なアルゴリズムのフローチャートについて解説します。
合計値と最大値のアルゴリズムは他のアルゴリズムの一部として利用されることもあるので、処理の流れをしっておくと便利です。
- 合計値を求めるアルゴリズムのフローチャートを教えて
- 最大値を求めるアルゴリズムのフローチャートを教えて
以降でフローチャートを見ながらみていきましょう。
1.合計値を求めるアルゴリズムのフローチャートを教えて
合計値を求めるには、配列の値をひとつひとつ順番に足していきます。
まず最初に、合計値を入れるsumに0を入れて初期化し、配列の最初から最後まで値を足す処理を繰り返します。
配列の最後まで足し終わったとき、 合計値が得られます。
2.最大値を求めるアルゴリズムのフローチャートを教えて
最大値を求めるには、配列(箱)に入っているデータを順番に見ていき、最大値かどうか調べます。
まず、maxには「仮に暫定の最大値」を入れていき(初期化)、もし「暫定の最大値」よりも大きい値が見つかったら、その値でmaxを上書きして「新しい暫定の最大値」とします。
配列の最後まで調べ終わったときに、maxに配列の最大値が取得できます。
まとめ: フローチャートを使ったアルゴリズムの書き方を習得して、プログラミングに活かそう
今回は、フローチャートを使ったアルゴリズムの書き方について解説してきました。
まとめると以下となります。
- フローチャートの3つ(順次・分岐・繰り返し)はアルゴリズムの基本構造を表している
- アルゴリズムをフローチャートで書くとプログラミングの質とスピードが向上する
- フローチャートはフローチャート作成ツールで作るのがおすすめ
フローチャートでアルゴリズムが書けると、アルゴリズムからプログラムに変換するコーディング作業がスムーズに進みます。
フローチャートからプログラミング言語で書くとどのようになるのか、繰り返し作業をすることでプログラミング力が身についていくからです。
初心者のうちは、処理の全体像を掴むためにも、フローチャートでアルゴリズムを書くのをおすすめします。
まずは、図記号の意味とアルゴリズムの基本構造をしっかりと理解し、フローチャートの書き方を押さえていきましょう。