SIerとは?不安視される将来性を5つの観点から解説

公開日: 2020.05.30
更新日: 2024.01.06
SIerは将来性がなくてやばい?

「SIerは将来性がないって聞くけど、どうして?」
「SIerはオワコンって本当?」

SIer(エスアイヤー)という言葉を知っている方は多いでしょう。

しかし、将来の仕事として考えた時、今後の需要があるのか不安に感じてしまいますよね。

今回は、SIerの将来性についてお話しします。

  • SIerの仕事内容
  • SIerに将来性がないと言われる理由
  • SIerの将来性が不安な人への提案

SIerに将来性がない理由や不安を感じる場合、どうすれば良いかを解説しています。

現職がSIerだけど、このままでいいのか悩んでいる、という方もぜひ読んでみてくださいね。

SIerとはそもそもどんな意味?

SIerの意味

「SIerってなんとなく聞いたことがあるけれど、具体的な意味はよく知らない」という方も多いでしょう。

まずはSIerの意味についてみていきましょう。

SIerとはシステム構築や導入を請け負う会社のこと

「SIer」とは、情報システムの構築や導入を請け負う会社のことです。

「SIer」の「SI」は「システムインテグレーション(System Integration)」の頭文字をとったもので、「情報システムの構築や導入を請け負うITサービス」を意味します。

この「SI」に「~する人」という意味の「-er」をつけてできた造語が「SIer(エスアイヤー)」です。
デベロッパーやサプライヤーなども「デベロップ(開発する)」や「サプライ(供給する)」に「-er」がついたもので同様です。

「SIer」の場合、一般的には人ではなく会社や業界を意味するので、「SIを行う会社」になります。

日本の場合、急激なIT技術の進化によりエンジニアが不足し、自社内で情報システムを構築できずに外注する企業が多いことからSIerが発生しました。
そのため「SIer」は和製英語であり海外では通じない言葉です。

SIerの歴史は30年以上

日本国内において「SI」という言葉は、1987年に通商産業省(現在の経済産業省)が創設した「システムインテグレーション認定制度」により一気に広まりました。

これは当時、SIの急激な需要の高まりから、SIの実績を備えている企業を「情報サービス企業台帳」に登録・認定することで、業務の情報システム化に関するノウハウを持たない企業が安心して情報システム化投資を行えるようにしたもの

企業は自社内で情報システム部門をつくる負担がなくなり、この制度の認定を受けたSI企業に情報システムの構築・導入までのサービスを、一括して外注することができるようになりました

なお、制度創設当時の目的が果たされたと判断され、2011年にシステムインテグレーター認定制度は廃止になっています。

SIer・SE・SESの意味の違いとは?

SIer、SE、SES、名前が似ているこの3つですが、何が違うのか気になりますよね。

ここでは、それぞれの意味の違いを説明していきます。

  • SIer:情報システムの構築や導入を請け負う会社。エスアイヤー。
  • SE:システムの設計・運用を行うエンジニア。システムエンジニア。
  • SES:システム開発のためにエンジニアの技術やSEを提供するサービス。システムエンジニアリングサービス。

つまり、SIerはシステム構築を請け負う「会社」、SEはシステム設計をする「エンジニア」、SESはシステム開発のための技術やSEを提供する「サービス」、ということ。

どれもシステムに関わる用語ですが、会社、人(職業)、サービスを指すという違いがあります。


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SIerの仕事内容

SIerの仕事内容

つぎに、SIerの仕事内容をみていきましょう。

主に4つのビジネス領域がある

SIerには主に4つのビジネス領域があります。

  1. ユーザー系
  2. メーカー系
  3. 独立系
  4. 外資系

ユーザー系

ひとつめは「ユーザー系」です。
これは企業の情報システム部門が、企業から分離・独立してできたSIer

自社システムの構築で培ったノウハウを活かして、ほかの企業の情報システム構築を請け負うようになることで分離・独立していきます。

主なユーザー系SIerは、大手企業の子会社が中心です。

通信会社の子会社では「NTTデータ」、証券会社の子会社では「野村総合研究所(NRI)」、総合商社の子会社では「伊藤忠テクノソリューションズ」などが挙げられます。

ほかにも銀行などの金融機関や鉄鋼・造船などの製造業系の子会社もあります。

メーカー系

「メーカー系」は、ハードウェアを開発するメーカー企業のシステム開発部門やソフトウェア部門が分離・独立してできたSIer

自社で作る大型計算機やスーパーコンビューターなどのハードウェアに搭載するシステムを、ひとつの商品として販売するようになったビジネスモデルです。

主なメーカー系SIerでは、スーパーコンピュータの開発を行っている企業の子会社が中心になります。

たとえば、NECや富士通、日立、日本IBMといった企業がグループ傘下にSIerを抱えています。

独立系

「独立系」は、ほかの企業やグループに属さず、独自にSIerとしてシステム開発に携わる会社です。

気の合うプログラマー同士が集まって設立された会社や、ユーザー系やメーカー系のSIerからスピンアウトして立ち上げられた会社、IT系の商社の新規事業としてSI事業をつくる例も。

独立系SIerでは、中小企業から大企業まで、さまざまな規模の会社が活動しています。

大塚商会、ITホールディングス、トランスコスモスといったところが中心です。

外資系

「外資系」は外国に拠点を置くSIer。
システム開発・導入をおこなう世界規模のIT企業やコンサルタント企業が中心
です。

自社商品の業務システムをクライアント企業に使ってもらうために、SIer事業としてシステム導入を請け負っているケースも少なくありません。

またシステムは企画、要件定義、開発、運用・保守という流れで構築されます。
外資系コンサルタントはシステムの上流工程である企画や要件定義を行い、開発や運用・保守はほかの会社に委託する場合も多いです。

主な外資系SIerは、IT系ではハードウェアを主に展開するシスコシステムズ、データベースソフトを展開するOracle、そして業務用パッケージソフトで有名なSAPなど。
コンサルタント企業ではアクセンチュアが挙げられます。

SIerはプログラミング以外の仕事が多い

SIerはシステム開発のためのプログラミング以外にも、企画、要件定義、運用・保守などの仕事がありその業務範囲は広いです。

したがって、プログラミングなどの技術領域より、マネジメントや資料作りが多くなることも

ITシステムを活用するすべての企業がビジネスの対象であり、その業界ごとにいかに実用的なシステムを導入し役立たせるかが求められます。

SIerには将来性がないと言われる5つの理由

SIerには将来性がないと言われる5つの理由

企業の情報システム導入に有用なSIerですが、なぜ将来性がないと言われるようになったのでしょうか。

SIerに将来性がないと言われる5つの理由をご説明します。

  1. クラウドサービスの台頭
  2. 優秀な人材のSIer離れ
  3. 人月商売ビジネスの縮小
  4. グローバル展開ができない
  5. スキルが身につかない

順番にみていきましょう。

1.クラウドサービスの台頭

クラウドサービスの台頭によって、システムは「一から開発する」から「あるものを利用する」ようになってきたことが、SIerに将来性がないと言われるようになった大きな原因です。

近年は、インターネットの普及によって安価な月額料金で利用できるPaaSやSaaS型のサービスが次々に登場しています。

メモ

PaaS(パース)とは「Platform as a Service」のことで、アプリケーションソフトが稼動するためのハードウェアやOSなどのプラットフォームを、インターネット経由でサービスとして提供・利用する形態のこと。

SaaS(サース)とは「Software as a Service」のことで、これまでパッケージ製品として提供されていたソフトウェアを、インターネット経由でサービスとして提供・利用する形態のこと。

企業にとっては、オーダーメイドでシステムを開発してもらうSIerよりも、クラウドを通じてサービスを利用するPaaSやSaaSのほうが簡単で費用も抑えられるのです。

2.優秀な人材のSIer離れ

優秀な人材がSIerから離れていっている現状も、一因として挙げられます。

なぜ優柔な人材が離れていくのかは、以下の通り。

  • 技術が身につかない
  • 過酷な労働環境
  • 給料が上がらない

SIerの仕事は技術職ではなく、企業に対して有効なシステムを提案・導入するためのコンサルティングやマネジメント領域が大きいです。
そのため技術力が身につかないという点があります。

また、クライアント企業による希望の変更などに振り回され、仕事量や時間外労働が過重になることも

そのような労働環境であるにもかかわらず、給料は上がらないため、優秀な人材はより良い環境を求めて離れていきやすいのです。

3.人月商売ビジネスの縮小

SIerは人月に頼るビジネスモデルとしての側面を持っていますが、この人月商売ビジネスの縮小も理由のひとつです。

人月とは「1人が1ヶ月でおこなうことのできる作業数(工数)」のこと。
SIでは下流工程に至るまで多くの人材を必要とし、人月がかかります。

そのため大手SIerが案件を獲得し、中小のSIerに仕事を依頼するというケースが多いです。

しかし人材不足から、元請けが下請けに、下請けがさらに孫請けに任せていく多重請け構造が進み、若い世代がSIer業界を敬遠する傾向になっていることで、人月商売ビジネスが縮小している現状があるのです。

今後に予想されるIT業界のさらなる人材不足によって、SIer業界が成り立たなくなる可能性が大きくなっています。

4.グローバル展開ができない

SIerは、情報システム開発・導入の外注に需要のあった日本特有のビジネスのため、海外にはその業界構造自体がありません。

海外の企業は自社内に情報システム部門があるため、SIerの需要がないのです。

そのことから、SIerの市場は国内に限定され、グローバル展開ができません

海外で戦う力のない企業は淘汰されていく時代、グローバル展開ができないことがSIer業界の将来性がないと言われる原因です。

5.スキルが身につかない

SIerはシステム開発の業務全般に携わりますが、技術職ではないためスキルが身につきません

これからは企業のみに依存せず、個人がスキルや能力を持って仕事をしていくことが必要です。

そんななかで、SIerではスキルが身につかないので、将来性があるとはいえないでしょう。


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SIer業界は今後なくなる仕事なの?

SIer業界は今後なくなる仕事なの?

人材不足や海外進出ができないなどの課題を抱えるSIer業界は、今後なくなってしまうのでしょうか。

SIerがなくなる可能性は低いがエンジニアとしての成長は難しい

SIerは国内においては一定数の需要があるため、なくなる可能性は低いといえます。

日本国内ではエンジニアの人材不足から、今後もすべての企業が自社内にシステム開発部門を置くことはせず、SIに外注するケースが多いことが予想されます。

そのため、技術力のあるSIerであれば生き残り、今後も続いていくでしょう。

しかし、スキルが身につかない環境であることは変わらないため、仕事の中で、エンジニアとして技術や知識を身につけて成長することは難しいです。

【決定版】SIerの大手企業一覧|会社の選び方、大手で働くメリットデメリットも解説

ITエンジニア自体は需要が増えるため専門スキルを身につけるべき

SIer業界は下降傾向ですが、ITエンジニア自体の需要は今後も増加していきます。

経済産業省の調査では、2030年には最大43.8 万人のIT人材が不足する見込みです。
(参考:経済産業省「IT人材需給に関する調査」表 3-6

IT人材であるITエンジニア自体が足りていないため、将来性のある仕事をしたいならITエンジニアとしての専門的なスキルを身につけるべきでしょう。

専門的なスキルを身につけるには、スクールに通う、独学で新たな言語を学ぶ、クラウドソーシングで案件を受注して実践的に身につける、などの方法があります。

SIerの将来性に不安を感じる人へ提案する3つのこと

SIerの将来性に不安を感じる人へ提案する3つのこと

SIerの将来性に不安を感じている人はどうすればいいのか、3つのことをお伝えします。

  1. 副業でスキルや経験を培う
  2. Web系など自社開発をする企業への転職
  3. フリーランスとして独立する

1.副業でスキルや経験を培う

現在SIerとして働いているなら、副業で開発系の案件を受注してスキルや経験を身につけるのがおすすめです

「クラウドワークス」や「ランサーズ」などのクラウドソーシングサービスを利用すれば、個人でも開発案件を受注することができます。

副業での案件獲得には、SIerとしての経験を活かすことができるでしょう。

案件を受注してプログラミングで手を動かし、開発技術を磨くことでスキルアップにつながります。

2.Web系など自社開発をする企業への転職

自社開発をするWeb系企業に転職すれば、より将来的に安心できます。

SIerと比較して、Web系企業には

  • 新しい技術が常に求められるためスキルアップができる
  • 年代層が若い企業が多く、考え方が柔軟で働きやすい
  • 実力や実績に応じて評価・昇給がされやすい

といった環境があります。

自社開発を行うぶん、技術力が必要になる場面が多く、新しいことを学ぶ機会も増えるでしょう。

また年齢や役職にかかわらず、実力や実績で評価される傾向にあるため、高いモチベーションで仕事に取り組むことができます。

自分自身のスキル向上がしやすい環境を選ぶことも、個人として将来性を安定させるために重要です。

3.フリーランスとして独立する

SIerとしてシステム開発・導入の一連の技術や知識があるなら、フリーランスとして独立することもひとつの道です。

フリーランスとして活動すれば、自身のスキルアップはもちろん、収入面も会社員時代より高くなる可能性があります。

すぐに独立するわけではなくても、将来的にフリーランスになることを考えて、今から必要な技術や知識を身につけていきましょう

行動を起こすのが早ければ早いほど、フリーランスとして活躍できる日も近づきます。

まとめ:SIerは完全にはなくならない。安住せず今後のキャリアをよく考えよう!

今回はSIerの将来性についてお伝えしました。

SIerという仕事は今後も完全になくなることはありません。
しかし、技術的なスキルを身につけたいと考える人には向かない業界かもしれません。

将来性に不安があるのなら、

  • 副業でスキルや経験を培う
  • Web系など自社開発をする企業への転職
  • フリーランスとして独立する

など、積極的に自分のキャリアを考えて、行動を起こしていくことが重要です。

SIerとしての経験やエンジニア技術を磨けば、個人として今後も仕事に困らない人材になることは十分可能。

現状に安住せず、スキルを身につけて将来活躍していける人材になりましょう。

ぜひこの記事を参考に、安定したキャリアを築いていってくださいね。

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